メディアで報じられるアメリカ発のニュースというと、国際問題だったり最新技術だったり企業最前線だったり。でも、アメリカでもネットで普通に盛り上がっているのは、やっぱり日本と同じような身の回りの話題が中心。アメリカの“お茶の間”ではどんなことが話題になっているのか--アメリカ在住の主婦兼ライターのウォール真木がレポートします。


 もう日本でもすっかりおなじみとなった動画ポータルサイトの「YouTube」。1日に世界中から3万5000本ものビデオがアップロードされ、アクセス数(Page View)に至っては10億以上。この数字、昨年2月に開設したばかりのサイトとしては、驚異的な成長ぶりであることを物語っています。

 もちろん、アーティストのプロモーションビデオ、映画のクリップなどが多数アップロードされているため、著作権法違反の問題が指摘されています。しかし「昨夜見逃したテレビ番組のココだけ観たい!」というときなどに「YouTube」が解決してくれるという便利さは、ユーザーたちを虜(とりこ)にしています。さらに「YouTube」のアクセスランキングをチェックすればアメリカのインターネット利用者の間で、今、何が話題になっているのか一目瞭然。マーケティングビジネスの視点から見ても、このサイトは今後もなくてはならない存在だと言えましょう。

 さて「YouTube」にアップロードされるコンテンツの中には、もちろん個人ユーザーが作成したオリジナル作品も少なくありません。そして、そんな一般の作品が、時に大ブレイクするのもインターネットの醍醐味です。今回ご紹介する青年も「YouTube」で「That guy who dances on the internet」(ほら、ネットで踊っているアイツ)として、今大変注目を集めている方です。

 この人、マットさんという名前なんですが、「Where the Hell is Matt?」という動画の中で何をしているかというと、ひたすら踊っているだけ。しかもその「踊り」というのが単に手足をバタバタさせているだけの、かなり素人、かつ滑稽なシロモノ(系統としてはタップダンスか?)……。

 何がすごいかというと、実はマットさん、世界中至るところを旅行したのですが、その行った先々でひたすら踊っているのです。アメリカ国内はもちろん、中国の万里の長城で踊っている、オーストラリアでカンガルーと踊っている、ナミビアの砂漠で踊っている、ボツワナで象に襲われそうになっても踊っている、イギリスで近衛兵の前で踊っている、パラオで海中のクラゲと一緒に踊っている、イースター島のモアイ像と踊っている、グアテマラの遺跡の前で踊っている、東京の渋谷で踊っている、南極でも寒さに震えながら半分ヤケクソで踊っている……。とにかく踊っている!!

 こいつ、いったい何者なんだろう、と思わずにはいられません。

 「You Tube」上にあった彼のプロフィールで個人サイトが紹介されていたので、そこをのぞいてみました。

 彼の名前は、マット・ハーディングさん。コネチカット出身の29歳で今はワシントン州シアトル在住。ビデオゲームが大好きで、それ以外に興味のあることもなかったのですが、ある日「ゲームばっかりで引きこもっててもなぁ……」と思い立ったそう。そして一大決心をして仕事を辞め、貯金をはたいて世界旅行に旅立ったのが2003年にのことでした。この時、ある人から「訪れた先々っで踊る姿をビデオに収めれば、面白い記念になるんじゃない?」と言われ、それを実行することに。これを編集して自身のサイトで公開したのです。

 するとこれがネット上で人気を得ることになり、マットさんは一躍カルト的な存在に。ウィキペディアにも彼に関する項目が作られたほどです。そして各方面から注目を浴びることになった彼のもとに、ある日「Stride」というチューインガムのメーカーからオファーがありました。彼のアイデアの面白さに「もう1度、世界旅行に出て同じようなビデオを撮影してこないか?」と、スポンサーとして名乗りを上げたのです。こうして2006年初めから再度6カ月間の世界旅行に旅立ったマットさんは、7大陸39カ国を旅してダンスを撮影。それが今回「YouTube」で公開されたビデオとなったのでした。

 ただ、世界中でステップを踏んで有名になったマットさんですが、なぜかアメリカのお隣の国であるカナダでは踊った経験がないんだとか。その理由については、彼自身がサイトで『カナダ人が大嫌いだから』と語っていたのですが、その後は『単にチャンスがなかっただけ』と言い訳を変えています。きっとカナダから沢山の苦情が届いたに 違いありません(笑)。

踊る、踊る、踊る……マットさん。ある意味ひたむきさも垣間見れるような、彼のワールドワイドなダンスをお楽しみあれ。元気が出てきますよっ

筆者紹介 ウォール真木(うぉーる・まき)
海外生活がそろそろ人生の半分にリーチしかけている主婦兼ライター。主にインターネットからの情報で日本人のアイデンティティーを保持しているつもりだが、周囲からは否定されている。現在2児の母で子育てに奮闘しつつ、Narinari.comで執筆活動中である。著書に「アメリカの弁護士は救急車を追いかける―アメリカの不思議なジョーシキ114」(宝島社文庫)。