ライブドアというと最近は暗い話題が多いけど、同社が提供しているWebサービスの分野では明るい話題もある。なかでもうれしいのが、Weather Hacks(ウェザー・ハックス)。気象情報を無料のRSSベースで提供している。RSSリーダーで読めるのはもちろん、ちょっとしたアプリケーションを開発すれば、気象情報の表示をカスタマイズしたり、別の情報と組み合わせたりできる。Web2.0的な天気予報もできる。


天気予報だってRSSリーダーで受信できる

Weather HacksのWebページ。関連情報がまとまっている
 Webページで天気予報など気象情報を提供するサービスは現在でもいろいろある。大手のポータル・サービスなら必ずやっている。もちろんライブドアもやっているけど、他ポータルサービスに先駆け、すごく大きなブレークスルーをやってくれた。Weather Hacks(ウェザーハックス)だ。気象情報をRSSで配信しているのだ。

 気象情報をRSSで、というと、「ブログのエントリ更新みたいだから、RSSリーダーで情報を受信すればいいのか」と普通は思うだろう。間違ってはいない。「天気予報もRSSリーダーで読めるのはいいな」という感想もいい線行っている。RSSリーダーで最新の気象情報が分かるのは便利っぽい。でも、それだけじゃない。

 おっと、その前にRSSリーダーはもう知っているよね。RSSリーダーには、goo RSSリーダーのような単独アプリケーションと、はてなRSSのようにWebサービスの2種類があるけど、機能は同じ。ごく簡単に言えば、最新情報の見出しとリンクを表示する仕組みだ。リンクをクリックすると該当Webページが閲覧できる。

 ブラウザーにFirefoxを使っているなら、RSS情報もブックマーク(お気に入り)のように利用できる、という話は、話題のブラウザーFirefox、バージョン1.5の新機能を速攻チェック!に書いてあるので参考にしてほしい。

FirefoxのRSS機能でも最新気象情報(ここでは地震情報)が分かる


Weather Hacksのアプリケーションが続々と誕生

 Weather Hacksがすごいのは、RSSリーダー向けに気象情報をRSSで配信しているということだけではない。RSS形式は融通性の高いXML文書の形式でできているから、情報をいろいろ加工して利用できるという点がグッドなのだ。

 いろいろ加工して、いじりたおすというのがHacks(ハックス)ということ。だから、Weather Hacks。現状ではまだ公開から日が浅いせいか感動的なまでのHacksの例はないようだが、いつくか試作品がある。具体的に見てみよう。

 ネーミングはちょっとベタっぽいけどけっこう極めつけなのが、GoogleMap + livedoor Weather Hacksだ。Google Mapsの地図情報サービスにWeather Hacksを重ねているから、各地の天気情報が地図上で分かる。RC-NET別館ではまだ実験の段階のようだが、お天気アイコンをオリジナルのデザインにしてポータル風に表示している。より実用的なのがフットサル大会、イベント情報のフットサルプラスだ。地味だけど大会会場のロケーションに合わせて天気をアイコンで表示させている。

 AjaxとPHP(サーバー)のコンビネーションで使えるlivedoor「Weather Hacks」のnucleus用プラグインも開発されている。この他、各種の利用の試みがお天気なんでもフォーラムに寄せられている。


10行程度のスクリプトでできるWeather Hacksの試作品

 たわいないけど、私もちょっとWeather Hacksの応用を作ってみた。現在執筆中の「VBscriptハッカーズ・プログラミング」の続編のサンプルでもあるのでVBScriptを使った。Yahoo! Widget Engineにインスパイアされた感じだ。

VBScriptでWeather Hacksのミニアプリケーションを作ってみた

 仕組みとしては、Windowsに内蔵されているXML通信用のアクティブ・エックスの"Microsoft.XMLDOM"を使ってWeather HacksのRSS(XML形式)を受信し、欲しいデータだけ抜き出して加工することだ。

 ちょっとだけプログラミングを学べば、10行程度の短いプログラムでWeather Hacksを扱うこともできるようになる。

 原理が分かるようにもっと単純な例を作ってみた。特定地域の現在の気温をダイアログで表示する14行のVBScriptスクリプトだ。WH_sample.vbsをzip圧縮内のWH_sample.txtの拡張子をvbsに書き換える。ダブルクリックすると実行できる。関心ある人はソースを見てほしい。過剰なウイルス・チェックや低速な通信環境だと、このVBScriptのプログラムは動かないかもしれないけど、こんな単純なプログラムでもRSS情報が利用できるんだというのは分かってもらえるだろう。

WH_sample.vbsを実行すると那覇の現在の気温を表示する


つまりこれがWeb2.0の実感ということ

 Weather HacksはWeb2.0の具体的ないいデモンストレーションになっている。そこでWeb2.0といえば、現在ネット関係者で話題の本、梅田望夫著「ウェブ進化論 (ちくま新書)」が連想される。Web2.0と呼ばれる技術革新がどうネットを変えていくかを詳しく解説しているからだ。

 そのなかに、「Web2.0・ウェブサービス・API公開」という項目があり、Web2.0のキモがAPIの公開であることを説いている。以下の引用では、「こちら側」は簡単に言えばデスクトップ・パソコン、「あちら側」はサービス・プロバイダーだ。

「こちら側」の一つのコンピュータの閉じた世界でAPIが公開される場合に比べ、「あちら側」からAPIが公開された場合、そのAPIを活用する側にとって、可能性空間が圧倒的に大きく広がるのである。

 同書ではWeb2.0のAPIとしてGoogle Mapsが例になっているけど、ライブドアのWeather Hacksも分野は違うけど似たように利用できる。

 これからどんなWebサービスを作る場合でも、またデスクトップ用のアプリケーションを作る場合でも、お天気の情報が必要になったらWeather HacksからXML形式の情報を取り出して加工すればいい。カーナビやGPS機器に気象情報を組み合わせることもできる。いろいろ活用のシーンが想像できる。

 問題はないの? ある。収益モデルだ。Weather HacksはRSS情報のなかにCMが入っているけど、それをどう伝えるかという仕組みはできていない。そのため、現状では商用には利用できないということになっている。みんながよろこんでお金が動かないとビジネスとしてはいま一つ発展しない。でも、新生ライブドアは今、お金儲けだけじゃない世界を切り開こうとしているようだ。(佐藤 信正)

著者

佐藤 信正(さとう のぶまさ)

テクニカルライター。1957年東京生まれ。国際基督教大学卒業後、同大学院で言語学を学ぶ。小学生のときにアマチュア無線技士を免許をとり、無線機からワンボード・マイコンへ興味を移す。また初代アスキーネットからのネットワーカー。通信機器や半導体設計分野のテクニカルライターからパソコン分野へ。休刊中の「日経クリック」で10年間Q&Aも担当していた。著書「Ajax実用テクニック」「JScriptハンドブック」「ブラウザのしくみ」など。