ライフハック(life hacks)って何かと思えば、昔から言われてきた「仕事術」っていうことみたい。だったらこんどの飲み会で、ちょっとした仕事術をライフハックとして言えばカッコいいかも。

ライフハックの話題は2年前のライターさんの講演から

 ライフハックの話題の元は2年ほど前。ダニー・オブライエンという米国のテクニカルライターさんの講演だ。演題は「ライフハックス、それはアルファー・ギークが過剰ともいえる生産性を維持する技術的な秘密だ(Life Hacks: Tech Secrets of Overprolific Alpha Geeks)」ということで、いきなり「アルファー・ギーク」が出てくるんだけど、このアルファーは日本語でいうとトップランナー、ギークはエンジニア。エンジニアのトップランナーということだ。そういうとなんだかプロジェクトXみたいにオヤジ臭くなるけど。

 日本で話題になり始めたのはこの春ごろ。オブライエンさんのインタビュー記事(Interview: father of “life hacks” Danny O’Brien)が注目された。  ライフハックが話題になったのは、技術者の仕事は常日ごろ生産性を向上させないといけないという背景があったからだ。もっと上手な仕事術はないか、というニーズは強い。現代のIT技術者って大変ですよね。

ハックの語源はハッカーと同じ

 ライフハックのハックなんだけど、もともと「なんとかHacks」というのは、Google HacksやAmazon Hacksなど技術系書籍で有名なオライリー出版のシリーズ名だ。話題の技術やサービスだったら、なんでもHacksをつけると技術界ではベストセラーというわけで、Life Hacksもクリスマスに合わせてオライリー出版から本が出る(Amazon.com: Life Hacks: Books: Danny O'brien,Merlin Mann)。

 ちなみに、ハックスというのはハッカーと同じ語源。ハッカーという言葉はだんだん悪い意味になってきてしまったけど、もとは技術を詳しく調べるのが好きな人ということ。ライフハックはハッカーのもとの意味に近い。ハックスと複数形になっているのは小ネタがいっぱいということ。

 例えば、やるべき仕事(ToDo)リストも特に重要な項目はでっかく書いておくとか、作業の進捗を20分ごとに区切って見直して滞るようなら別の作業をするとか、いつでもICレコーダーをもっていて突然アイデアが浮かんだときにその場でメモ代わり録音しておくとか(これは私のライフハック)。

「ライフハックスはGTDなんだよ」とかますとさらによし

 ライフハックって何と訊かれたら、仕事術だよ、というのはこのコラムだけの話。ちょっとカッコ悪い。カッコよくするなら「ライフハックスはGTDなんだよ」とかますといい。  「GTDってなんすか?」と当然ツッコミがあるよね、よろしい(ないと寒いけど)。  GTDは"ゲッティング・シングス・ダン(Getting Things Done)"の略。意味は「ものごとを楽に済ますこと」だ。米国経営コンサルタント、デビッド・アレンのベストセラー「仕事を成し遂げる技術」のオリジナルタイトルでもある。どうでもいいけど、NBSは"No Bullshit"「マジほんもの」という意味の略語。「これが僕のライフハックですよ、GTDです、まじNBSっす」とかいうとギークっぽい。

 この本、副題が「ストレスなく生産性を発揮する方法」とあるように、つまりライフハックと同じ意味だし、ポイントはストレスなくということだ。具体的には本を読んでいただくといいけど、GTDの極意は「頭をからっぽにする」ことらしい。禅の無の境地ってのかも…まさか。  というわけで、ライフハックは、もとは技術者向けの仕事術という感じだったのだけど、技術者向けと限らず、パソコンやインターネットを活用しないといけない普通の仕事術というふうになってきた。

 さらに、「生活のハック」という感じで、近藤典子の収納術とか奥薗壽子のズボラ料理術みたいに、だんだんひろがりつつある。たぶん、そこまで広がったらこのネタも終了なんでしょうね。(佐藤 信正)

 

著者

佐藤 信正(さとう のぶまさ)

テクニカルライター。1957年東京生まれ。国際基督教大学卒業後、同大学院で言語学を学ぶ。小学生のときにアマチュア無線技士を免許をとり、無線機からワンボード・マイコンへ興味を移す。また初代アスキーネットからのネットワーカー。通信機器や半導体設計分野のテクニカルライターからパソコン分野へ。休刊中の「日経クリック」で10年間Q&Aも担当していた。著書「Ajax実用テクニック」「JScriptハンドブック」「ブラウザのしくみ」など。