CPUが発する熱は大きくなるばかり。最新のPentium Dはとうとう発熱量が最大130Wに達してしまった。CPUを常に冷やし続けないと、CPUは熱で止まってしまう。

 正常なCPUの温度は、Pentium 4やPentium Dならアイドル時で40~50℃台、負荷時でも70℃前後だ。多くのPCではBIOSの設定画面でCPUの温度が表示されているので、一度画面で確認してみよう。

 だが、このCPU温度とはCPUのどこを測っているのだろう? CPUの表面やコアの内部、ヒートシンクなど、測る場所によって温度は大きく異なってしまう。

 CPUの温度に関する定義は、実は大変奥が深い。今回はIntelの温度定義に関する用語を解説しつつ、CPU温度の疑問を解き明かしていこう。


こんなにあった、Pentium 4とDの温度指標

 通常、BIOS設定画面などに表示される温度は、CPUコアに内蔵された「サーマルダイオード」と呼ばれる温度センサーによる測定値だ。これに加えてIntelの場合、主にPCメーカーの設計者向けに、CPUの温度を外部から測るための細かな定義を用意している。

 下の図はIntelによる温度の定義だ。上から順に見ていこう。まずTAはCPUが吸い込む、ケース内の空気の温度を示す。現行のPCケースは「38℃シャーシ」の規格を守っているが、この38℃とはTAの温度を指している。

 TSはヒートシンク表面の温度だ。これは主にヒートシンクの冷却能力を計算する材料となる。PCやパーツの設計者には重要な温度だが、ユーザーが普段目にすることは少ない。

 TCはTCASEの略で、CPUコアを覆う金属ケース表面の中央部の温度となる。測定するには金属部に溝を掘る必要があるが、外部から正確に測定でき、かつCPUコアに近い部分の温度なので、システムを設計する際の大切な指標となる。これは後半で詳しく解説しよう。

 そして最後にTDIODEだ。名前から分かるように、CPUコアが内蔵するサーマルダイオード得られた測定値のこと。これが普段、我々がBIOSの画面や測定ツールを通して知る、いわゆるCPUの温度となる。

Pentium 4と同DにおけるCPU関連温度の定義。赤で示した項目は今回詳しく解説する、CPUに直接関係する温度だ。「TC」はIHS(Integrated Heat Spreader:CPU表面の銀色の金属部分)の表面中央の温度。「TDIODE」はCPUのコアに実装されたサーマルダイオードで測定した温度。BIOS画面に表示される温度だ。サーマルダイオードは2つ搭載してあり、1つはCPUのファン制御用、もう1つは異常発熱時の保護回路動作用となっている


CPUの温度制御を支えるTDIODE

 TDIODEはCPUクーラーのファン制御に使われている。下図にある左のグラフはCPUの負荷とTDIODEの温度の関係を示したものだ。CPUの負荷が増えればTDIODEも上がるので、右上がりのグラフとなる。グラフ中の「TCONTROL」は冷却の制御が必要になる温度。逆にTDIODEがTCONTROLを超えない限り、CPUクーラーのファンは停止していても構わない。

 実際にはTCONTROLに達してから冷しても間に合わないので、ある程度の温度になったところから、じわじわとファンの回転数を上げていく必要がある。

IntelのCPUには製品個体ごとに「TCONTROL」という温度が設定されている。CPUのコアの温度がTCONTROLに達するまでの間はファンの回転数を低い値に設定して構わない。左の画面はIntel純正マザーボード「D915GAGL」のCPUファン制御のメニュー。オン/オフの項目しかないが、十分な静音制御ができている

 ちなみに、TCONTROLの値はCPUの個体ごとに違う。PrescottコアのPentium 4ではトランジスター回路の微細化に伴い、漏れ電流(リーク電流)が大きくなってしまった。漏れ電流の量はCPUの個体ごとに異なるため、発熱量にも個体差が出る。そこで発熱量の多いCPUではTCONTROLの設定を高めにして、騒音が大きくならないようにしてある(下図)。

TCONTROLの温度はCPUごとに違う。CPUが内蔵するレジスターに「TBASE」「TOFFSET」の2つの値が書き込んであり、マザーボードのBIOSがそれを読み取り、合計してTCONTROLを決める。TBASEはCPUの種類ごと、TOFFSETはCPUの個体ごとに用意されている

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