これまで使っていた固定電話の番号をそのまま使えるIP電話サービスがKDDIから登場した。IP電話普及の起爆剤となるか?


 NTTの一般電話を解約してFTTHとIP電話だけの通信環境 --- 僕としては、これが自宅における、電話の未来形で通信の理想パターンだと、かねてより考えていた。何にも増して、固定電話の電話基本料、月額1750円が節約できるメリットは大きい。

 この秋には、一般電話からIP電話への着信も実現予定なので、いよいよ一般電話解約の好機到来かと、ほくそ笑んでいた。しかし、実際にそれを実行に移すとなると、電話番号が「050」になるため、友人知人親戚一同への変更通知や各種サービスの届け出内容の変更など、結構面倒な作業が発生する。それに、電話番号が変わることに対する家族の猛反対は目に見えている。

 また、些細なことだが、実生活において何かの申し込みの際に「050」から始まる番号では「こいつは固定電話を持っていないのか…、信用できるのか?」と思われるのもイヤだ。

 というわけで、一般電話の解約は当分無理かとあきらめていたら、KDDI から、その理想をかなえてくれるFTTHサービス「KDDI光プラス」が登場した。

 「KDDI光プラス」は、KDDIがこの秋から開始する、IP電話、ネット接続、ネット放送をパッケージ化したマンション向けのFTTHサービス。すべてセットで月額6950円(プロバイダー料も含む。標準的なプランの場合)。IP電話とネット接続のセットでは、月額4550円(同)の価格となっている。

 中でも注目は、KDDI光プラスのIP電話サービス「光プラス電話」。これまで使っていた電話番号がそのまま使えるというのだ。もちろん、緊急電話の通話も可能。IP電話に乗り換える際の障壁になっていた、電話番号が変わってしまう問題が解決でき、さらに固定電話の基本料金1750円も完全にいらなくなるわけだ。このニュースに、がぜん勇気がわいてきた。


KDDIが10月8日に発表した、主にマンション向けのFTTHサービス「KDDI光プラス」。マンションまで最大1GbpsのFTTH回線で、マンション内は最大70MbpsのVDSL、もしくはEthernet回線で接続する。ネット接続、IP電話、ネット放送の3つのサービスを用意。セットで月額6950円(1マンションで16契約以上、VDSL接続の場合)だ。なお、IP電話単体で月額1980円(同)というメニューも用意している

●固定電話の番号をIP電話でも利用するための条件

 実は、この6月、総務省の「電気通信番号に関する研究会」がまとめた報告書の中で、IP電話サービスでこれまでの固定電話の番号をそのまま使うための条件が示されている。研究会がIP電話提供事業者に示した条件は次の4項目。


  • その1 ユーザー宅まで回線を直接引き込んで、局側に収容装置を設置する
  • その2 固定電話並みの通話品質を確保する
  • その3 番号と発信場所の関係が維持できる仕組みを盛り込む
  • その4 事業計画に確実性があること

 さて、上記の条件を細かく見ると...、

 「その1」の条件を満たすには、各戸に自前で光ファイバーを引くかNTTの加入者系ダークファイバーを利用して、局側に通信設備を置かなければならない。これをサービス展開するためには、かなりのコストがかかる。実行できるのは、事業規模の大きい事業者に限られるだろう。

 「その2」は、読んで字のごとく、通話品質を確保するという意。

 「その3」は、例えば「045」から始まる電話番号の発信場所は、横浜でなければならない、という条件。あたりまえと言えばあたりまえだが、IP電話の番号は、NTT固定電話のように交換局の設置場所に縛られることはない。IP電話サーバーに接続できれば日本、いや世界(理屈の上で)のどこで使っても同じ番号が使える。

 例えば、上記KDDIのIP電話サービスを横浜で利用する人が大阪に転居した場合、これまで通りに「045」を使い続けたらどうなるだろう。どう考えたって具合が悪い。電話番号と地域性の関係は、社会的に認知されたものだから、誰だって045=横浜を連想する。だから、総務省としては混乱を避けるために、このような条件を付けたようだ。

 「その4」は説明の必要はないだろう。「儲からないからやーめた」というような、いい加減な事業をするなということ。

 これらの条件を満たせば、IP電話であっても、「03」や「045」を使ってもいいというわけだ。

 ただ、「03」や「045」が使えるといっても、これまでNTTで使っていた番号をIP電話の番号として利用するには、もう一工夫必要。今までの番号は、あくまでもNTTの固定電話に割り当てられたものだからだ。

 そこで、登場するのが「ナンバーポータビリティー」という仕組み。これは、電話の事業者を乗り換えても、今までの番号を“持ち歩く”ことができるというもの。事業者側の電話網に、番号を変換する仕組みを設けることで実現する。これはCATV事業者が提供する電話ですでに実用化済みで、今回のKDDIのサービスにも含まれている。

 KDDIは、以上の条件を満たす仕組みを構築した上で事業計画を提出し、認められたということ。

 僕としては、ちょと残念なのが、当初予定しているサービスがマンション向けという点。早く戸建てでもサービスを開始してほしいのだが、テレビ放送、IP電話、ネット接続を同時に提供するための宅内機器などのコストを考えると、始めは数の期待できる集合住宅狙いになるのだろう。

 ただ、KDDIブロードバンド・コンシューマ事業本部ブロードバンド企画部長・片岡浩一氏によると、「来年度中にはエリア内の戸建てにもサービスを提供したい」ということなので、待ち遠しい限りだ。

●NTT東西こそすべきサービスなのでは?

 この原稿を書いていて、なんだか、胸につっかえるというか、わだかまるものがある。そう、上記の条件を他の誰よりも簡単にクリアできて、FTTH上で固定電話番号のIP電話を提供できる事業者が他にあるではないか。NTT東日本と西日本だ。

 NTT地域会社が、現在のBフレッツユーザー向けに、固定電話と同じ電話番号が使えるIP電話を始めるとしたらどうだろう? IP電話サービスの料金によると思うが、KDDIのサービスのネット接続+IP電話のプランが、現在のBフレッツ+固定電話の基本料+プロバイダー料金よりも1000円以上安い価格設定であることを考えると、今よりは安くなることが予想される。僕も含め多くのBフレッツユーザーとしては、早期に実現してほしいサービスではないだろうか。

 そうはいっても、独占的な事業者であるNTT地域会社がそのようなサービスを始めることへの警戒や抵抗が各方面から出るのだろうとも思う。それに、当のNTT自身としても電話基本料の減収につながるわけなので、「はいそうですね」といって単純に開始できない事情もあるだろう。

 各家庭へ光ファイバーを引き込んでその上にあらゆる通信サービスを提供するというやり方は、NTT自身が21世紀のサービスビジョンとして「VI&P構想」で90年代の始めから見続けていた夢だ。市井のBフレッツユーザーとしては、「FTTH+固定電話の番号でIP電話」は、ぜひとも実現してほしいサービスである。


筆者紹介山崎潤一郎yamasaki@geomet.gr.jp
1957年生まれ 蟹座のO型。本職は音楽制作会社のディレクターだが、インターネットに興味を持ち、ひょんなことからプロバイダーを評価する書籍を執筆。以来ネット系のライター稼業にも精をだす毎日が続いている。週刊アスキー、インターネットマガジン等に執筆。近著に『株の買い方・売り方が面白いほどわかる本』『稼げるIT資格親切ガイド(共著)』(中経出版刊)がある。 西日本新聞 「デジタルQ」連載「また買ってしまった」、Yahoo! Internet Guide連載「高速インターネット入門」も好評連載中。