その昔、僕は天体観測が好きな少年だった。当時はまだそれなりに星を眺めることのできた東京の夜空を、父親に買ってもらった天体望遠鏡でよく眺めていたものだ。あるとき、部分日食ではあったが、実際にその瞬間を目の当たりにして感動したことを覚えている。あれから約30年。僕の中に潜んでいた「天体熱」が、再び呼び覚まされたようだった。

30分余りの「授業」を終えると、今度は日食観察用のメガネ作りだ。先着50家族分の材料が用意され、原則として小学4年生以上が作れることになっていた。
「えー、オレのはないの!?」
「だから、さっき説明したじゃん」
出かける前は、「メガネは作らなくていい」と潔く言っていた2年生の息子だが、どうやらレクチャーを聞いて作りたくなったらしい。ぐずりそうな息子をどうやってなだめようか考えていると、幸運にも材料に余りが出たため、兄弟姉妹のいる家族にはもうひとつ配られた。事態が丸く収まったところで、メガネづくり開始。日食観察メガネといっても、別段ややこしいものではない。厚紙を用意したら、まずは目に当たる部分を四角にくり抜き、そこに遮光性の特殊なフィルムを貼り付け、厚紙でサンドイッチするように貼り合わせたら完成だ。
「それではメガネを持って、実際に校庭で太陽を観察してみましょうか」
参加者全員が日食観察メガネを完成させた頃合いを見計らって、講師が外へ出るよう促した。この日は雲も少なく、太陽を観察するには絶好の条件だ。
「あ、すごーい! 太陽がまあるく見えるー!」
「ホントだ! すげぇー!」
我が子らは体育館の外へ出るや否や、空を見上げて興奮気味に声を上げた。
「お父さんにも、ちょっと見せてよ」
おもちゃのような手づくりメガネとはいえ、その機能は必要にして十分で、大人の僕たちも思わず童心に帰って、至って「ノーマル」な太陽を眺めて興奮してしまった。





