そしてセレモニーは、いよいよクライマックスを迎える。色とりどりの紙テープがデッキの上から放たれ、船上の人々と埠頭で見送る人々が両端をしっかりと握り合う。紙テープは冷たい海風にあおられ、ビシビシと今にもちぎれそうな音を立てながら、幾筋もの鮮やかな弧を描く。まさしく港での別れの風景を象徴するシーンだが、やはり紙テープの色が映えて絵になるのは、真っ白な船体の「屋久ツー」のほうだ。
ブォー……。
腹の底に響くような気笛が港に響き渡ると、大きな船体はゆっくりと岸を離れていく。
「せんせー、さよーならー!」
「元気で頑張ってねぇー!」
子供たちは声を張り上げ、手を振りながら、もう片方の手でぎゅっと握り締めていた紙テープを、一人、二人と手放していく。船は岸から20〜30メートル離れたところで、沖へ向かって真っ直ぐバックしながら、次第に遠ざかっていった。すると、今までにはなかった、ちょっとした異変に気がついた。船体の右側と左側のデッキがそれぞれ独立しているため、乗客が船首に回り込めないのだ。デッキの上をぐるりと一周できる「屋久ツー」なら、乗客は船の向きに合わせてデッキの上を移動しながら、常にお互いが対面する形で手を振り合える。その分しみじみと別れを惜しむことができるのだが、屋久島丸ではそれができず、どことなく興ざめな雰囲気が港に漂った。やがて沖のほうで舵を切って転回すると、船上の人々は中央の船室を突っ切って反対側のデッキに顔を見せたが、ほどなく屋久島丸はスピードを上げ、あっけなく港をあとにした。

その翌日、翌々日と、僕たちは3日続けて宮之浦港を訪れたが、いずれも寒風吹きすさぶ、南の島の春とは思えない中での見送りとなった。そして今年は、「屋久ツー」のある別れの「島風景」に、一度も立ち会う機会がなかった。僕たちは初夏の風薫るときに、「屋久ツー」に乗って移住してきた。それだけに今回は、そのときの思い出をしっくりと重ね合わせられなかったせいか、いつになく感慨深さに欠けていた感がある。それはともかく、時の流れは途切れることなく、僕たちの島暮らしは、節目となる5年目に突入した。





