
登山口からしばらくは、杉の人工林に囲まれた道を緩やかに登っていく。林床にはシダ類が繁茂し、クワズイモやヘゴなど、南国の植物が点在する。徐々に標高を上げていくと、ある地点を境にがらっと植生が変わり、うっそうとした照葉樹の天然林が展開した。それからまもなくして、すでに遺跡のような佇まいを見せる炭焼き窯の跡に出くわす。かつてはこんな山奥にまで、生活圏がおよんでいたのだ。
「ちょっと休憩しようか」
「はい」
30分ほど歩いたところで、早めに小休止を入れることにした。登山口で一緒になった女子大生は、普段あまり運動をしていないというものの、さすがに若いだけあって、体力的には全く問題なさそうだ。
「この先は少しきつい道が続くけど、大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
再び歩き出すと、道はにわかに険しくなり、急峻な斜面をジグザグに縫うように続く。途中の沢で喉を潤し、息を整えたらさらに登り詰める。ここで一気に標高をかせぎ、ふっと道が緩やかになると、周囲にはいつしか霧が立ち込め、僕たちは幻想的な森の中にいた。




