僕の住む船行集落は島の真東に位置しながら、冬はほかの集落に比べて一際寒く、地元では「屋久島の北海道」などと呼ばれている。里地に雪が降ることなど滅多にない屋久島だが、船行だけは雪が降ったり積もったりすることがしばしばある。はっきりした理由は分からないが、幾つかの地理的条件が重なって、雲ができやすい上に、北西の冷たい季節風が山岳地帯をかすめながら、船行の辺りに吹き抜けてくるようなのだ。今年も12月初旬には船行を中心とした一帯だけにあられが降りつけ、近所のみかん畑も薄化粧をするほどだった。
毎年この季節になると、そんな寒々とした船行集落を鮮やかに彩る花がある。冬を代表するツバキ科の花、さざんか(山茶花)だ。特に船行バス停付近には数十本のさざんかが咲き乱れ、はらはらと花びらを落としては、道を鮮やかなピンク色に染めていく。その光景は、道行く人も思わず足を止めるほどの美しさだ。船行の寒い風土とさざんかのもつ冬のイメージがうまく調和して、まさに我が船行集落を象徴する風景のひとつとなっている。

季節は半年ほどさかのぼって初夏のころ。船行区の役員会で「むらづくり活性化事業」についての話し合いが何度かあり、僕も「むらづくり推進委員」の一人として会合に出席した。それは町の助成事業のひとつで、各集落の活性化を図る取り組みに対して一定の額が町から助成されるというもの。船行区では、中長期的には衰退しつつある農業や林業の維持・推進という大きな課題があるが、まずは生活環境の向上を図る具体策のひとつとして、さざんかと桜の植栽を行なおうと計画。1年中花の咲く、明るく美しい村づくりを目指しつつ、「船行の花=さざんか」というさらなるイメージづけを図ろうというわけだ。




