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「どこまで行きますか?」

「カヤックは水深が20センチあれば漕げるからね。もう少し先まで行ってみようか」

「へぇ〜、そんなに浅くても大丈夫なんだぁ……」

やがて川底の丸石が目立ち始めるも、水深が膝下くらいになるまで漕ぎ進み、これ以上は進めないというところでようやくカヤックを降りてひと休み。

「やっぱ、川の水は冷てぇ〜」

海水の暖かさに慣れてしまっただけに、川の水が一段と冷たく感じる。さっきまで見えていた九州第2峰の永田岳(1886m)は雲に紛れてしまったものの、里山と清冽な川の織り成す風景は、のんびり佇むには最高の眺めだ。何をするともなく、しばしぼんやりしたら再びカヤックに乗り込んで海を目指す。そして河口まで戻ってくると、今度は打ち寄せる波を正面から突っ切るべく、一気に漕ぎまくる。

「行けぇー! ファイトぉー!」

「いっぱぁーつ!」

大して波は高くないが、それなりにスリリングで楽しい瞬間だった。無事に波を乗り越えて再び海に出ると、漁港まではすぐの距離だ。

「菊池君、パドリング、いい感じになってきたよ」

「ホントですかっ!」

カヤックを乗り替えてから、所々でパドリングのレッスンを受けていたのだが、いよいよゴールの漁港が見えてきたとき、野元さんがそう言ってくれた。その感覚を体に覚え込ませるようにして、最後のパドリングをじっくり味わいつつ、この日のツーリングは幕を閉じた。

「シーカヤックで屋久島を一周したら、どれほど美しい風景に出会えるだろう……」

いつか抱いた僕の好奇心は、今回のシーカヤック・ツーリングで再び刺激され、具体的なイメージを伴っていっそう強くなった。屋久島に暮らして3年半が経つが、この島のまだ見ぬ風景は山ほどある。そして「大人の島遊び」も、まだまだ尽きることはなさそうだ。

菊池 淑廣(きくち・よしひろ)

1969年、東京生まれ。1993年にスポーツウェアメーカーに入社。一貫して広告宣伝の仕事に携わり、自ら撮影、コピーライト、デザイン制作までマルチにこなす。

2005年4月、家族共々屋久島へ移住。それと同時に広告事務所「屋久島メッセンジャー」を設立し、雑誌やウェブサイトなどを通じて屋久島の情報を発信しながら、広告プランニング、撮影、コピーライト、ロケ・コーディネートなど、幅広く活動している。著書に「屋久島で暮らす あるサラリーマンの移住奮闘記」(山と溪谷社)。

ブログ「フォトライター菊池の屋久島移住ライブ日記」も公開中。

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