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「あそこの磯で食べようか」

野元さんもそれを知っているのだろう。産卵の痕跡がある場所を避け、岩場の上でランチをとることにした。以前にご馳走してもらった野元さんオリジナルの「黒潮パスタ」は、ツアーで食材を使い切ってしまったため、残念ながらこの日は弁当。しかしながら、ビールの肴に「カメノテ(磯に生息するフジツボなどと同じ仲間)」をその場で獲って塩ゆでにすると、たったそれだけで幸せを感じる贅沢なランチとなった。

食後はスノーケリングをしたり昼寝をしたり、はたまた強力な水鉄砲で水をかけ合ったりと、思うままに「島時間」を過ごす。そんなふうにしてまったりとした時間を過ごすのは、僕にとっても久しぶりだった。

「次はパートナーを代えて漕ぎましょうよ」

「オッケー。じゃあ、男チームと女チームだね」

仲間の提案で今度は僕が野元さんの前に乗り込む。このまま帰ってしまっては物足りないので、永田川を遡上することにした。前浜の脇に流れ込んでいる永田川の河口に、波に乗るようにして滑り込む。すると一転して、静かで穏やかな空間に切り替わった。波のない平滑な水面をチャプチャプと音を立てながら漕ぎ進むと、やがて山深い風景が展開する。

「なかなかいい空間だねぇ〜」

僕の後ろで野元さんがつぶやいた。屋久島の川はどこもそうだが、海と山とが密接だ。わずかな時間で風景が一変する分、感動も大きいのだ。

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