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野元さんのあとに続いて漁港を抜け出た次の瞬間、紺碧の東シナ海が限りなく広がった。カヤックの下を覗き込むと、群青色に透き通る海中に巨岩がゴロゴロと転がっている。それはそのまま海を突き出て断崖となって切り立ち、その上には緑濃い森が形成されている。屋久島は花崗岩が隆起してできた島だが、まさしくそれを物語る光景だ。

「あっ! ウミガメだ!」

仲間の一人が興奮気味に声を上げた。指差すほうを見ると、ウミガメが海面にひょこっと顔を出してプカプカ漂っている。

「ホントだっ!」

僕がそう叫んだ次の瞬間、こちらの存在に気づいたのか、慌てた様子で海の中へと姿を消してしまった。すぐ近くにウミガメ上陸産卵数日本一の「いなか浜」があるだけに、この辺りには数多くのウミガメが回遊しているらしく、同じような光景がそっちこっちで見られた。

「じゃあ、この辺でスノーケリングでもしよっか!」

そう言うか言わないうちに、野元さんはカヤックからドボンと海に飛び込んだ。全員待っていましたとばかりに水中マスクとスノーケルを装着し、エメラルド色に揺らめく海に滑り込む。PFD(ライフジャケット)を着けているので潜ることはできないが、水面からでもクリアに海の中を見渡せる。水深は10メートルほどありそうだが、巨大な花崗岩が敷き詰められた海底で、たくさんの魚が戯れているのがはっきり見える。海の奥底まで射し込んだ陽光が白い花崗岩に反射して、海中を明るく浮かび上がらせているのだ。眼下に展開する壮大な海中景観。それは碧色の妖しい煌めきを放つ、美しく神秘的な世界だった。

(次回へ続く)

菊池 淑廣(きくち・よしひろ)

1969年、東京生まれ。1993年にスポーツウェアメーカーに入社。一貫して広告宣伝の仕事に携わり、自ら撮影、コピーライト、デザイン制作までマルチにこなす。

2005年4月、家族共々屋久島へ移住。それと同時に広告事務所「屋久島メッセンジャー」を設立し、雑誌やウェブサイトなどを通じて屋久島の情報を発信しながら、広告プランニング、撮影、コピーライト、ロケ・コーディネートなど、幅広く活動している。著書に「屋久島で暮らす あるサラリーマンの移住奮闘記」(山と溪谷社)。

ブログ「フォトライター菊池の屋久島移住ライブ日記」も公開中。

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