「今年は綱引き、できるかねぇ……」
「え!? 綱引きって?」
綱引きと聞いて、息子が間髪を容(い)れず食いついてきた。
「十五夜綱引きよ」
「あー、ボクが相撲で勝ったやつ?」
「うん、そう」
「十五夜綱引き」は、豊漁豊作や家内安全などを祈願する島の伝統行事のひとつで、毎年旧暦の8月15日、いわゆる「中秋の名月」の晩に各集落で執り行なわれる。息子は移住当初から、どういうわけかこの綱引きと相撲にはやたらと熱が入るようだ。
「綱引き、今年もできないのぉ?」
「予報では雨っぽいんだよねぇ」
「え〜〜〜……」
親子ともども毎年楽しみにしている行事だが、昨年はある事情で中止になった上、今年も天気が思わしくなく、できるかどうか微妙だった。
そして迎えた9月14日。今年はこの日が十五夜となった。朝からどんより曇ってはいるが、とりあえず雨は降っていない。予定どおり朝8時に船行神社の境内に集合すると、区の役員と何人かの有志がすでに「綱打ち」を始めていた。村人が持ち寄った「カヤ」で綱を綯(な)うのだが、僕にとって綱打ちは初めての体験だ。まずはカヤに絡みついた雑草を削ぎ落し、二人がかりで交代しながらカヤを継ぎつつ綱を綯っていく。思った以上に腕力と握力を使うため、1セットあたり5分程度しか続かない。こうして長さ30メートルほどの綱に仕上げ、同様に3本の綱をこしらえる。1本、2本、そして3本目に取りかかったころ、ポツポツと雨が降り出した。





