昨年の夏、漁師の友人の漁船でクルージングを楽しませてもらった。大海原から屋久島の山々を望み、さらには安房(あんぼう)川を遡上して魚捕りやカヤックを楽しむという、海と川の両方を巡る盛り沢山のクルージングだった。しかしながら、ひとつだけ残念に思ったことがある。それは最後に川を下りながら飲む、1本のビールがなかったことだ。
「また子供たちを連れて、船で遊びましょうよ」
今年もその友人から、「漁船クルージング」の誘いがかかった。
「いいねぇ〜。子供たちも喜ぶと思うよ」
子供たちが喜ぶのはもちろんだが、僕にとっても願ったり叶ったりだ。今年こそビールを持って気持ちよく漁船クルージングを完結させたい。ひそかにそう思った。

そして8月半ばに予定を組んだものの、屋久島は不安定な天候が続き、計画は先延ばしになっていた。友人の休漁日と天候のタイミングが合わないまま夏休みも終盤に入ると、あとは最後の日曜日、8月31日に期待するしかなくなった。ところがその前日の時点で、日曜日の天気は「曇のち雨」の予報。夏休み中の漁船クルージングはほぼ絶望的となった。
「明日も無理かもねぇ……」
「そうですね。今回は中止にして、9月にウチの船で“流れ船”でもしましょーか?」
「それもいいねぇ。久しく流れ船に乗ってないし……」
「流れ船」というのは、ゆったりと川を流れながら夏の宵を楽しむ納涼船のこと。安房川では昔から島人に親しまれている大人の川遊びだ。子供たちにはかわいそうだが今回は中止にして、9月以降に大人向けの川遊びで仕切り直すことにした。




