「菊池さん、今度、船行の区会議員になってくれませんか?」
僕の住む船行の区長から、区の役員改選の会合があった際にそんな打診をされた。つまり評議員の一人として、船行区の役員になって欲しいというのだ。僕にとっては、まさに寝耳に水。言葉の意味は分かっても、事情までは瞬時にのみ込めなかった。
「でも、私なんか、縁もゆかりもない“よそもん”ですし……」
少しの間をおいて口に出た言葉は、おそらく僕の正直な気持ちの表れだった。船行は屋久島の中でも古くからある集落のひとつで、地の人が多く、当然ながら区の役員も地の人ばかり。生粋の島人に交じって、いきなり役員など務まるかどうか……。そんな思いから出た言葉だった。
「逆によその人の意見を聞きたいんですよ。我々役員は船行の人間ばっかりでしょ」
「ええ……」
そう言われてしまっては、もはや逃げ道はなさそうだ。
「まあ、奥さんとも相談してもらって、改めてお返事をいただければ」
「分かりました……」
あまりに唐突な話だったので、返事はいったん保留にしたものの、引き受けないわけにはいかなそうだ。よそ者の僕にも、そんなふうに声を掛けてもらえるのはありがたい限りだが、果たして僕にできることなどあるのか、そんな不安に駆られながら帰宅した。
「そこまで言ってくれているし、断る理由もないから、引き受けてみようかな……」
「まあ、お世話になってるしね。いいんじゃない」
妻にも事の経緯を説明し、僕の意向を伝えて同意を得たら、あとは心の準備をするばかりとなった。




