今年の冬は、例年に比べて雪が少ない。そう言うと何だか北国のことのようだが、もちろんそうではない。南国の屋久島での話だ。さすがに里で雪が降ることは滅多にないものの、観光客に人気の「ヤクスギランド」や「白谷雲水峡」に雪が積もるのはしょっちゅうで、そこまでの道が雪のため通行止めになるのは常日頃のことだ。
ところが今年の冬は、年末年始の寒波以来、山にもまとまった雪は降っていなかった。ようやく2月の半ばにぐっと冷え込んだかと思うと、山にはドカッと雪が降り積もったらしく、久しぶりに通行規制を知らせる町内放送が島を駆け巡った。小さい頃から相も変わらず、「雪」という言葉を聞くと、どういうわけか胸が躍る。通行止めが解除されたら雪の積もる森を歩きに行こうと、そのタイミングをそわそわと見計らっていた。

それからちょうど一週間。絶好のトレッキング日和が訪れた。ヤクスギランドのさらに上、淀川登山口へと続く町道は閉鎖されたままだったが、白谷雲水峡とヤクスギランドまでは問題なくアプローチできる。どちらに行くか迷ったが、滅多にないほどの好天とあって、奥岳の山並みを一望できる「太鼓岩」を目指すことにした。太鼓岩は白谷雲水峡のさらに奥、標高約1000メートルの山中にある。




