屋久島の冬の味覚といえば、「ポンカン」と「タンカン」。島を代表する二大柑橘類で、島内には「ぽんたん館」という物産店もあるほどだ。地元ではそれらを総称して普通に「ミカン」と呼んだりもするのだが、それぞれ味も違えば、収穫の時期も異なる。

大正時代に台湾から伝わったとされるポンカンは、どちらかというとさっぱり系の爽やかな味。それに対してタンカンは、ポンカンとオレンジ、あるいは温州みかんとオレンジの自然交配種など諸説があるが、いずれにしてもオレンジ系の濃厚な甘みが特徴だ。地元ではタンカンのほうが人気で、優柔不断な僕にとっては甲乙付け難いのだが、強いて言えば皮が剥きやすいという横着な理由で、ポンカンということになるだろうか。
時期的にはポンカンのほうが一足早く、12月に入ると一斉に収穫が始まる。そして「お歳暮商戦」が一段落すると、我が家にもおすそわけが方々から回ってくるようになる。自分たちが食べる分は買わなくても事足りてしまうので、ありがたい限りだ。そしてポンカンの季節が終わる頃、入れ替わるようにしてタンカンが出回りはじめる。屋久島では2月の上旬から中旬にかけて「はさみ入れ」を行う農家が多く、まさに旬を迎えたばかりだ。
2月半ばのある日、知人の農園でタンカンの収穫を始めるというので、夫婦そろって手伝いに行くことにした。屋久島に移住して3度目の冬だが、「ミカンちぎり」をしたことは今までに一度もなく、今年こそはとチャンスをうかがっていたのだ。
はさみ入れの前日は、珍しく里でもみぞれが降るほどに冷え込み、当日も冷たい雨のぱらつく寒い朝を迎えた。知人の農園は島の南部に位置する平内(ひらうち)集落にある。我が家からクルマで30分ほどの距離だ。家を出て10分も走ると雨は上がり、次第に雲も切れてくると、平内はまさしく「収穫日和」で、穏やかに晴れ渡っていた。




