念願のカヤックを手に入れた。知人から中古で購入した、「シットオントップ」と呼ばれるオープンデッキのレクリエーション艇だ。カヤックがあれば行動範囲は水の上にも広がり、遊びの幅もぐっと増す。そして普段は見られないような島の風景を、我が子らにも見せてやることができる。そう思うと、早く乗りたくて仕方がなかった。

実は子供たちの夏休み前には、カヤック購入の話が具体的に進んでいたのだが、僕がバレーボールの最中に指の腱を断裂するという、何とも小恥ずかしいケガに見舞われ、話は先送りになってしまった。夏休みも終わろうという頃にはカヤックを手に入れたものの、全治3カ月にわたるケガではしばらくパドルを握ることもできず、ほぼ完治すると同時に今度は運動会シーズンに突入してしまい、我が家のカヤックは納車ならぬ納艇してから、2カ月以上も眠らせたままになっていた。
10月最後の日曜日、長かった運動会シーズンも終わり、久しぶりにのんびりした朝を迎えた。家族だけで過ごす休日は、実に1カ月半ぶりだ。
「あとで、カヤックに乗りに行こうか?」
「カヤック!? 行く行くっ!」
今年の4月、海祭りでカヤックの楽しさを覚えた娘は、間髪を容れずに食い付いた。
「誰と……?」
息子は至って冷静だ。我が子らはマイカーならぬマイ・カヤックを購入したことを知らない。どうせしばらくは乗れないと思っていたので、あえて話していなかった上に、狭い我が家のどこにカヤックを置くべきか、すぐに思いつくアイデアがなかったため、とりあえず知人のところに置かせてもらったままにしていたからだ。
「買ったんだよ、カヤック」
「ホント!? じゃあ、今度から好きなときに乗れるの?」
「もちろん。でもこれから寒くなってくるから、乗れるのは今のうちだな」




