このページの本文へ
ここから本文です

屋久町最後の体育祭(後編)

2007年10月15日

「ゲートボール通過競争」が終盤に入ると、アップをしていた選手も続々とスタート地点に集まってきた。いよいよ出番だ。30歳代の男性は7組目のスタート。刻々とそのときが近づくにつれ、さらに緊張が高まる。前の組がスタートすると、ついに緊張はピークに達し、心臓が胸を突くのが分かる。この手の緊張感を抱くのはいつ以来だろう。この歳になって味わうその感覚は、何だか懐かしくもあった。

二つ三つ深呼吸をして、一歩二歩と前へ進む。スタートラインには「スターティングブロック」が設置されているものの、使った経験がないからどの程度に調整すればいいのか分からない。なんとなくしっくりいく位置に合わせ、スターターの合図を待つ。ふとレーンの先に目をやると、ゴールがはるか先にかすんで見える。

「100メートルって、こんなに長かったっけ……」

この期におよんで、改めて100メートルの距離感を確認した。

「位置について」

次の瞬間、まるでオーディオのボリュームを絞るように、僕の耳には一切の音が入って来なくなった。あれほど高まっていた緊張感も、不思議と消え失せている。ピストルの音だけに神経を集中させたとき、不要な感覚は一切の機能を停止してしまったような、そんな感覚だった。

「よぉーい」

“パーン”

反応よく飛び出すと、あとは何も考えずに、ただひたすら突っ走る。半分くらいを過ぎたとき、1人の選手が抜け出した。

「えっ? めちゃめちゃ速いぞ、アイツ……」

左前方にその彼の背中を捉えている以外に、僕の視界には他の選手の姿はない。このままゴールすれば2位だ。最後は倒れ込みながら、ようやく100メートル地点に辿り着いた。13秒少々という短い時間が、僕にはとてつもなく長い時間に感じた。

あなたのご意見をコメントやトラックバックでお寄せください

ここから下は、過去記事一覧などです。画面先頭に戻る バックナンバー一覧へ戻る ホームページへ戻る

日経BP社の書籍購入や雑誌の定期購読は、便利な日経BP書店で。オンラインで24時間承っています。

ご案内 nikkei BPnetでは、Internet Explorer 6以降、 Safari 2以降、Opera 8以降、Netscape 8.1以降またはHTML 4.01/CSS level 1, 2をサポートしたWebブラウザでの閲覧をお勧めしております。このメッセージが表示されているサポート外のブラウザをご利用の方も、できる限り本文を読めるように配慮していますが、表示される画面デザインや動作が異なったり、画面が乱れたりする場合があります。あらかじめご了承ください。

本文へ戻る