
今年も船行(ふなゆき)集落では、年に一度の「岳参り(たけまいり)」が行われた。岳参りは山岳信仰のひとつとして、各集落で今なお営まれている島の伝統行事。その年の豊漁豊作や家内安全などを祈願する参詣登山で、船行では集落の裏手に聳える「三野岳(みのだけ・943m)」に参詣している。
昨年、船行に引っ越して間もなかった僕も岳参りに同行させてもらったが、これがなかなかきついルートだった。三野岳にはほとんど人が入らないため、道は荒れて分かりにくく、行程の半分以上は藪を掻き分けながらの登山であった(昨年の記事)。
今年も台風の接近で悪天が心配されたが、思ったより穏やかな朝を迎え、集落を代表して“若手”3人が集まった。すでに30代後半に差し掛かっている僕も、ここではまだまだ“若手”の域に入る。さらに今回は、隣の永久保(ながくぼ)集落からも3人が参加することになった。町民体育祭や町内一周駅伝では、船行・松峰(まつみね)とともに「明星チーム」を結成する同志だ。永久保は戦後に開拓された新しい集落ゆえ、岳参りの慣習がないという。岳参りそのものが廃れてしまった集落もある中、多くの人がこうした島の伝統文化に積極的に触れることは喜ばしいことだ。昔から脈々と受け継がれてきた価値ある文化を保存・継承していく点において、その意義は大きい。
日が昇る前に山の神へ捧げる「砂」を拾うため、まずは近くの田代海岸へと向かう。踏み跡のないきれいな砂を拾い集めたら、船行神社でお参りを済ませ、いよいよ登山口を目指す。夜が明けて次第に明るくなるも、山は雲に紛れて一寸も見えない。標高300メートル付近の登山口に到着すると、周囲は真っ白い霧に包まれ、雨は降ったりやんだりを繰り返していた。




