「縄文杉」に展望デッキがつくられるのは、環境保護の点において致し方ないが、ピーク時の混雑を少しでも緩和しようと、今では黄色いペンキで「立ち止まり禁止区域」まで示されてしまい、まるで工事現場のような様相を呈している。これでは神聖な雰囲気を感じるどころか、片道5時間を歩いた末の俗っぽい現実に、落胆する登山客も少なくない。
一方、「もののけ姫の森」付近では、幅2メートルもなかった登山道は少しずつ、しかしながら確実に広がり、そこだけ歪(いびつ)に広々とした空間ができてしまった。それを見かねた誰かが「それ以上森に踏み入らないように」と、枝で柵をこしらえたのだろう。看板こそないものの、やはり違和感があるのは否めない。
「少し前までは、この辺もふかふかの苔にびっしり覆われていたんだけどねぇ……」
地元のある人は、僕たちの立っている足元を指しながら、寂しそうにそう漏らした。
「あ、そこから先には踏み入らないでくださいね」
「え? あ、すみません……」
観光客のひとりがガイドに注意されていたが、悪気があっての行為では全くない。苔むした森の風景に心奪われ、思わず入ってしまうのである。たとえ悪気はなくても、こうして登山道が広がってしまっているのが現状だ。さり気なく置かれた柵では効果が薄いということで、次には黄色いペンキで「立ち入り禁止」とでもするのだろうか……。そうならないことを願っていた矢先、それとは別に「もののけ姫の森」と書かれた興ざめな看板が立てられたのは、最近のことだ。





