今年の夏は連日のように、各地の猛暑を伝えるニュースがしきりに流れていた。8月半ばには、岐阜と埼玉で最高気温40.9度という前代未聞の暑さを記録。南国の屋久島でさえ、最高気温が35度を超えることはほとんどない。暑さの「質」も都会のそれとは違い、日陰さえあれば昼寝ができるほどに涼しい。朝晩に至っては、山から吹き下ろしてくる風がひんやりとして、肌寒いときもあるほどだ。
「そのうち、屋久島も避暑地になるかもね……」
ポツリと口をついて出た妻の言葉も、あながち冗談とは言い切れない。実際、この夏に遊びにきた僕の両親も、東京より屋久島のほうが過ごしやすいと話していたほどだ。
しかしながら、さすがにここは南の島。気温こそ30度そこそこでも、日差しの強さはハンパではなく、「暑い」というよりは「痛い」といったほうが表現としては適切だ。そんなときは島らしく、水と戯れて涼を取るのが手っ取り早くて気持ちがいい。今年も我が子らが夏休みに入ると同時に、海へ川へと足を運んだ。
移住して2年目の昨年の夏には、海遊びも川遊びも、我が子らはすっかり板に付いていた。ところがこの夏のはじめに、島の西に位置する「横河(よっご)渓谷」を訪れると、我が子らは揃っていつもと様子がおかしい。どうやら行った場所が悪かったようだ。というのも、昨年、息子はここで足を滑らせて溺れかけた。深刻な事態ではなかったものの、本人にとっては悪夢のような出来事だったはず。それを目の当たりにした娘とともに、そのときの記憶がよみがえったのだろう。それまではこの川も、臆することなく遊びこなしていたのだが、この日はやたらと慎重だ。そのくらいの緊張感をもってくれたほうが親としては安心だが、あまり消極的すぎるのも「島っ子」らしくない。
「ほら、気持ちいいぞぉ〜!」
天然のウォータースライダーを楽しそうに滑って見せると、我が子らも多少の恐怖心を残しながらも、少しずつ水と戯れはじめた。そしていつしか、静かな山あいにはしゃぎ声を響かせながら、ようやく二人ともしっくりと、島の風景に馴染んでいた。





