「来週の誕生日は、久しぶりに外食しようか?」
「ホント!? どこに?」
「どこでもいいよ、お前の好きなところで」
7月14日で6歳の誕生日を迎える息子と、そう約束していた。屋久島へ移住して来たとき、息子はまだ4歳だった。当時は色白で柔だった息子だが、島の自然に囲まれた濃密な2年間は、彼をたくましく成長させていた。
息子が誕生日の外食先をあれこれと悩んでいる一方、台風4号が沖縄、奄美と次々に直撃すると、いよいよ屋久島にも上陸する気配が濃厚になってきた。今回ばかりは逸れるような気配もなく、よりによって14日の息子の誕生日をピークに、約2年ぶりの上陸となりそうだった。
海は12日から荒れはじめ、この日から船の便は欠航が相次いだ。フェリーが欠航になると、島には物資が入って来なくなる。台風に備えて夕方にスーパーへ買い出しに行ったものの、すでに牛乳やパン、カップ麺の類はほとんど売り切れ。2年前と同じく、今回も出遅れる結果となってしまった。
13日は朝から海の便の欠航を知らせる交通情報や、台風接近に備えて早めの準備を促す放送が、町の防災無線を通じてひっきりなしに鳴り渡り、島はいつになく慌ただしかった。町内すべての小学校が、午後の授業を打ち切って集団下校させるという放送が流れると、いよいよ台風上陸は現実味を帯びてきた。夕方には雨も降りはじめ、海は波の音を轟かせて港をのみ込まんとしていた。

「こりゃあ、今夜から缶詰だな……」
予想どおり、夜には一段と風雨が強まり、上陸するのはもはや時間の問題だ。
「明日はせっかくの誕生日だけど、外食は無理だな」
「え〜〜〜……」
「台風でどこも休みだし、おそらく明日は一歩も外に出られないよ。ケーキも買えなかったから、誕生日パーティーは台風が過ぎてからにしようか」
「プレゼントは?」
「プレゼントもインターネットで頼んでるけど、これじゃあ届かないね……」
「じゃあ、台風が過ぎたら誕生日パーティーやって」




