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相性の悪い風景

2007年7月2日

屋久島に来てから、どうも相性のよくない風景がある。上流から霧の流れてくる安房川の風景だ。以前からその幽玄な風景を写真に収めようと狙っているのだが、まるっきりタイミングが合わない。霧の動きは思った以上に早く、目まぐるしくその表情を変える。シャッターチャンスが短いのはすべてに言えることだが、相性が悪いのはそれだけではない。

直径30キロ程の屋久島を流れる川はどこも短く、源流から海までせいぜい十数キロしかない。山に降り注いだ冷たい雨は、標高差千メートル以上を一気に駆け下る。そのため河口付近でも水温は低く、雨上がりなど水分の飽和した空気が水面に触れると急激に冷やされ、霧となり雲となる。霧が川面を滑るように流れてくるのはそのためだ。

僕がはじめてその風景を目にしたのは今から2年程前。雨上がりのある日、クルマで安房大橋を渡ろうとすると、川を真っ白い霧が流れていた。橋を渡り切って上流側のすぐ隣に架かる旧橋へ下りてみたが、霧は儚くもすぐに消えてしまったのだった。それ以来、安房川に霧のかかるときは決まってカメラを持ち合わせていなく、霧の出そうな気象条件のときにカメラを持って出ると、そういうときに限って霧は出ない。そんなこんなで今に至るまで、霧の流れる川の風景を写真に収められないままでいた。

朝から雨が降り続いていた梅雨のある日、ちょっとした調べ物があって、僕は島内の博物館を訪れていた。1時間ほど調べて回り、閉館時間になって外へ出ると、すでに雨はやみかけていた。帰り道、クルマで安房川に差し掛かったとき、川面から霧が立ち上っている光景が目に飛び込んできた。

「あ〜あ、またやっちゃったよ……」

前日、前々日とカメラを持ち歩いていたのに、この日に限って持っていない。調べ物に気を取られ、この日が霧の出そうな天候だったことなど気にも留めていなかった。しかし、博物館で役に立つかもしれないと、コンパクトデジカメを持っていたのは不幸中の幸いだ。大橋を渡って左折すると、川の畔にクルマを止め、旧橋の上でしばし霧の行方を眺める。立ち込めてはスーッと上層の空気に吸い込まれるようにして消え、消えてはまた水面からフッと立ち上る霧。少し先の上流でその光景が繰り返されているものの、なかなか霧は手前まで流れてこない。

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