「とりあえず宿を目指しながら、島をドライブしようか」
「釣りはいつするの?」
何はさておき、息子は釣りがしたくて仕方がない様子。
「宿のすぐ目の前でできるらしいから、夕方にやろうよ」
港から島の外周を通るメインルートに出ると、南回りにクルマを走らせる。メインとはいえ、信号もなければ車線もない、舗装された林道のようなものだ。幅の狭い道の両わきには、視界を遮るように草木が生い茂っている。屋久島ではちらほらと咲き始めたばかりの「ヤクシマアジサイ」が満開で、一帯に独特の匂いを放っている。「ホウロクイチゴ」もひと足早く花を咲かせ、すでに甘く芳醇な実をつけていた。港で捉えた空気感は、やはり気のせいではなかったようだ。

屋久島との微妙な季節感のギャップを楽しみながら、新岳(657m)と古岳(638m)の外輪を沿うように走っていると、所々に登山口がある。条件さえよければ、火山に登って屋久島を眺めたかったのだが、どの登山口にも「登山禁止」の看板が立てられていた。最近は火山活動が活発らしく、いつ噴火してもおかしくないという。道沿いの随所に設けられたコンクリートの退避壕が、妙に現実味を醸し出していた。
展望のきく場所に出ると、山側のいかにも火山らしい赤茶けた風景とは対照的に、海側には青々とした牧野が広がる。まさに「緑の火山島」と呼ぶにふさわしい風景だ。島には牧場が点在し、ともすると「交通量」はクルマより牛のほうが多い。狭い道で牛とすれ違ったり、信号待ちはなくとも「牛待ち」があったりと、何とものどかな光景に出くわす。島民より牛のほうが多いというから、それもうなずける。




