今からちょうど5年前、この季節に旅人として屋久島を訪れたときに、民宿で食べたたけのこの味が今でも忘れられない。炭火で焼いただけのシンプルなものだったが、そのあまりの美味さに、ただただ感動したことを覚えている。

屋久島に移住して以来、たけのこの季節を迎えると、そのときの記憶が強烈によみがえり、竹林を目にするたびに気になって仕方がない。我が家の周りにも、至るところに竹林はあるものの、誰の土地か分からないまま、むやみにとるわけにもいかず、今までたけのこ狩りに行くことは控えていた。
4月30日、夕方から降り始めた雨が一段と強まるなか、船行集落の総会が公民館で行われた。1年ぶり、僕にとっては2度目の総会だ。昨年と違って勝手が分かっているから戸惑うこともない。昨年度の転入者は僕たち1世帯だけだったが、今年度は一気に増えて6世帯。まだまだ新参者の僕たちにとっては心強い。そして昨年同様、総会が終わるとそのまま「のんかた」(=飲み会)がはじまった。
「菊池さん、たけんこは、とりに行った?」
まるで心の中を見透かされたようで、一瞬ドキッとした。つわぶきの新芽が「つわんこ」なら、たけのこは「たけんこ」と、屋久島ではそう呼ぶ。
「いや、まだなんですよ。とりに行きたいんですけど、とっていい場所かどうか分からなくて……」
「じゃあ、今度一緒に行く?」
「ホントですか!? ぜひ!」
「渡りに船」とはまさにこのこと。突然のチャンス到来に、ここでお願いしない手はない。しばらくすると、今度は別の人が声を掛けてきた。
「明日、たけんこ狩りに行かんか? 今年は涼しいから、“孟宗”がまだとれるからよ。8時くらいでええか?」




