「今日はキビナゴが入ってるよ」
行きつけの寿し居酒屋を久しぶりに訪れると、その日に揚がったばかりのキビナゴの刺身を出してくれた。シャキッとした歯ごたえと、スルッとしたのどごし。そしてクセのない淡白な味わいは、新鮮なキビナゴならではだ。
キビナゴは暖かい海に生息する、イワシなどと同じニシン科の魚。鹿児島はその産地のひとつで、一般的には春先から初夏にかけての産卵前が旬だと聞く。ところがここ屋久島では、秋から春先にかけて獲れるそうだ。つまり一般的な旬の時期とはまるっきり逆。キビナゴが美味いのもそろそろ食べ納めというわけだ。
「今度、キビナゴ漁へ一緒に行く? 今のうちだよ」
「えっ、連れてってもらえるの!? ぜひ!」
この島に暮らすようになってから、食と季節感が密接に連動するようになった。それはきっと、旬の恵みをいただくだけでなく、そこに体験も伴うからだ。せっかくのチャンスをみすみす逃すはずもなく、少々仕事が立て込んではいたものの、どうにか都合をつけて一緒に連れていってもらうことにした。
当日は小雨がパラついていたが、海はしばらくぶりの凪だ。漁は何回かに分けて行うらしく、まずは先発隊がブリなどの大型回遊魚を狙いに出発。僕は港で待つが、20〜30分もすると船は戻ってきた。すると1メートルはあろうかというブリをはじめ、地元ではアカバラと呼んでいる天然のカンパチや、ツムブリという同じブリの仲間を仕留めてきた。





