2月に入ってからの屋久島は、まだ冬とも、もう春とも言い切れない、微妙な日々が続いている。暖かくなったかと思えば寒い日もあったりと、時折季節が後戻りしながら、少しずつ春の気配が漂いはじめている。
生き物の息づかいと季節の移ろいは密接で、ここ最近、夜になると虫が鳴くようになった。とはいえ、虫たちもまだ戸惑い気味で、鳴く夜とそうでない夜とがある。彼らは微妙な気温の変化を敏感にキャッチして、ある一定の温度を境に鳴くようだ。この島に暮らすようになって、僕もそうした自然を捉える感覚が鋭くなったのか、「今夜は少し暖かいな。虫が鳴くかな…」と思うと、1匹、2匹と鳴きはじめる。東京ではすっかり眠りほうけていた「センサー」が、本来の機能を取り戻したようだ。
そしてもうひとつ、この島に来てから敏感に働く「センサー」がある。精度の高さは虫ほどではないが、それは焼酎の「お湯割り」がうまいと感じるかどうかで、微妙な季節の変化を察知する。グラスからふわりと立ち上る、ほんのり甘い芋の香りを楽しみながら、その湯気と一緒にすする焼酎。その味は寒ければ寒いほどに、ぐっとうま味を増す。鹿児島には数多くの島々が浮かぶが、屋久島ほど寒々と、確かな冬を感じながらお湯割りをいただける島は他になかろう。
そして焼酎の肴といえば、やっぱり島の幸。中でも「つきあげ」と「さば節」は、焼酎との相性が抜群にいい。どちらも屋久島の名産で、つきあげは主にトビウオのすり身を原料とした、いわゆるさつま揚げの類だが、鹿児島本土のそれと違い、つなぎとしての小麦粉や豆腐などを使わないのが特徴だ。魚のうま味がぎゅっと凝縮された濃厚な味と、ぷりっとした歯ごたえのある食感はクセになる。一方さば節は、さばの身を燻したもので、乱暴にいえば「かつお節」のさばバージョン。屋久島のさば節は特にいいダシが取れるとして、高級料亭などでも使われているという。焼酎のツマミとしていただくのは「なまり節」で、これを島ラッキョウと和えると、絶妙な味のハーモニーを奏でる。こうしたつまみが食卓に並ぶと、ついつい酒を飲むペースも上がってしまう。





