僕の住む集落は、島の東に位置する船行(ふなゆき)という集落。かつては「船雪」と書き、屋久島では最も寒い地域といわれ、船に雪が積もったことが地名の由来だとか。船行は古くからある集落で、現在では90世帯ほどが暮らす小さな集落だ。
島の秋はどこの集落も忙しく、運動会やら綱引きやらが毎週のように行われる。10月2週の日曜日には「屋久町・町民体育祭」、通称「町体」があったばかりだが、それが終わると今度は各集落で、こぢんまりとした運動会が催される。こぢんまりといっても、その内容はどこも盛大で、集落を挙げての一大イベントとなっている。
船行集落でも、町体の翌週に「船行区大運動会」が行われる。会場は公民館前の広場。広場といっても、一周約90メートルのトラックがようやく取れる程度だ。狭いながらも前日の会場づくりは本格的で、グランド整備にはじまり、テントや万国旗、入場門の設営はもちろんのこと、大きな竹を山から切り出して来ると、国旗と町旗を掲揚する手づくりの旗竿まで立てられた。普段は子供たちの遊び場が、立派な会場へと様変わりした。

そして当日。朝早くから約1時間おきに、運動会への参加を促す集落の放送が流れる。僕たちも9時過ぎに会場へ行くと、すでに多くの人が集まっていた。町体に引き続きこの日も青空の下、いよいよ開会式がはじまる。入場行進では、優勝旗を持った「上町」の中学生を先頭に、集まった集落の人たちがあとに続く。船行では、集落を貫く道を境に、山手側を「上町」、海手側を「下町」と分けて得点を競い合う。
最初の種目は徒競走。年代別に幼稚園児からお年寄りまで、順に行われる。町体は選ばれた人だけが出場する“本気モード”の運動会だが、集落の運動会は全員参加が鉄則。出来るだけ多くの競技に出場することが求められる。町体では出番のなかったおじいちゃんやおばあちゃんも、一周90メートルの距離を懸命に走るのだ。
「おじぃ、あんまりきばる(=頑張る)なよぉ〜」
「おばぁ、もっとゆっくり走らんか、ケガすっと!」
そんな温かい声援が、笑いとともに飛び交う。小さな集落では、住民全員が身内のようなもの。終始アットホームな雰囲気の中、次々に競技が行われる。ゲートボールの道具を使った「ゲート通過リレー」や「ビールの早飲み競争」など、たとえ走れなくても、老若男女誰もが楽しめる競技が多いのが、町体とは異なる点だ。




