今年も「十五夜綱引き」の日がやって来た。豊漁豊作や家内安全などを祈願する、島の伝統行事のひとつだ。それは毎年旧暦の8月15日、いわゆる「中秋の名月」の晩に執り行われる。中秋の名月というと満月のイメージが強いが、必ずしもそうではなく、今年は満月の前日、10月6日が十五夜となった。
昨年は島人としてはじめて、安房集落の十五夜綱引きに参加した。安房の街中で行われたそれは、島人だけでなく、観光客も一緒になって、かなりの熱狂ぶりを見せていた。今年は春に引っ越してきた船行集落での参加。おそらく地元の人たちだけによる、また違った綱引きになりそうだった。
午後7時。こうこうと輝く名月が、船行神社の鳥居の上に昇る頃、境内にはぼちぼちと、ごく自然に人々が集まりはじめる。神社の境内は広く、子供たちの絶好の遊び場であり、行事があれば人々の集う場所でもある。いわば、集落の人たちの拠り所といえる。
まずは綱をお月さまに奉納する神事が営まれる。拝殿の前で、男たちが順番にお神酒を授かり、巻かれた綱にも振りかけていく。由緒ある船行神社で営まれるこれらの神事は、雰囲気からして厳かだ。それが終わると、境内の端から端まで綱をいっぱいに延ばし、横たえる。この綱を踏むことは許されず、綱に触れれば無病息災のご利益があり、それを引けばなおよいとされる。

いよいよ1本目。まずは子供同士の戦いだ。集落を貫く道を境に、山手の住人と海手の住人に分かれての勝負。我が家は山手のチームだ。綱の横に整列して十五夜の歌を謡い、謡い終えると同時に綱を取って一斉に引き合う。我が子らは二人とも、いつになく真剣な表情で、太い綱を懸命に引く。1戦、2戦、ともに山手側が勝利を収めた。その後、女性だけ、30代、40代の男性だけ、そのうちに老若男女が入り乱れて、幾戦も繰り広げられる。僕は30代男性の戦いに参戦し、思いのほか持久戦にもつれ込んだ末、どうにか勝利。腕がパンパンになるほどの真剣勝負となった。
そしていよいよ、子供たちの相撲大会がはじまる。どの集落も綱引きの後には、相撲が執り行われる。ここでも我が子らの鼻息は荒い。昨年は二人とも勝利し、おそらくそのときの記憶が刻まれているのだろう。朝から綱引きはもちろん、相撲のことをしきりに口にしていた。




