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ツガとヒメシャラの物語

2006年8月21日

屋久島の森は、とかくヤクスギばかりが注目されがちだが、見どころはそれだけではない。ヤクスギの巨木が育つ森では、モミやツガといった針葉樹の巨木も多く、その風格は決してヤクスギに負けていない。また、ヤマグルマやヒメシャラなどの広葉樹は、屋久島では曲がりくねった奇妙な風姿をなす個体が多く、独特の存在感を放っている。様々な樹木がひしめき合う太古の森では、森全体が非常にゆっくりとした、しかしながら見応えのある生命のドラマが繰り広げられている。

標高約1000メートル。ヤクスギの巨木が立ち並ぶ「ヤクスギランド」の森でも、静かなドラマは刻々と、至るところで展開されている。この森を歩くたびに、僕の気を引く二つの木がある。ツガとヒメシャラだ。ツガはマツ科の植物で、日本では本州中部からここ屋久島にかけて分布している。一方、ヒメシャラはツバキの仲間で、関東以西にごく普通に見られる日本の固有種。どちらも屋久島の森を構成する代表的な樹種だ。

ヤクスギランドをしばらく歩くと、木道沿いに立つ、「毛むくじゃら」の大きな木に出合う。空に向かって真っ直ぐに森を貫く、どっしりとした立派なツガだ。幹はびっしりと苔に覆われ、そこを見るだけでは樹種を判別できない。この辺りは雲霧帯と呼ばれ、霧が発生しやすく、空中湿度が非常に高い。苔の生育しやすい環境であるため、至るところで「毛むくじゃら」の木が見られる。このツガ、見るからに男っぽい容姿をしているのだが、実は大らかで優しい女性だ。水分をたっぷり含んだ、苔むしたフカフカの体には、いくつもの植物が芽吹き、まるでたくさんの子供たちを育む母のよう。ツガは漢字で書くと「栂」。木へんに母とは、まさにその名の通りである。

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