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箱庭のオアシス

2006年7月31日

夏の色濃く漂う湿原の風景を堪能したあと、僕は誘われるように、眼前にそびえる黒味岳(1831m)のてっぺんを目指した。

「あのてっぺんから見る、湿原の風景はどんなだろう…」

僕の好奇心はかき立てられていた。この島のてっぺん、九州最高峰の宮之浦岳(1936m)には何度も登頂しているが、黒味岳にはまだ一度も登頂していなかった。

花之江河から緩やかな上りを20分も歩くと、黒味岳へと向かう分岐に辿り着く。ここで僕は黒味岳へは折れずに、そのまま真っ直ぐ進んだ。道を間違えたわけではない。飲水があまり残っていなかったからだ。地形図からすると、黒味岳の山頂までは結構な急登。おそらく残っている水以上の汗が出るはずだ。分岐の少し先には小さな沢があるので、念のためそこで水を補給してから、山頂を目指すことにした。

水を補給して再び分岐まで戻ってくると、黒味岳方面へとルートを辿る。右に折れるとすぐに、ザックがふたつ道脇に置かれていた。このルートではよく見られる光景だ。山頂までは標高差約200mを一気に登る。だからここにザックを置き、空荷でピークを目指す登山客が多いのだ。僕はここにカメラ機材を置いていくわけにはいかないので、そのまま突き進む。すると、いきなり鎖場が現れた。鎖場とは、岩壁などに鎖やロープが架けられ、それを伝って上り下りする場所。しかもそれが何箇所も連続して現れる。なるほど、ザックを置いていく人が多いわけだ。

標高1800m付近まで登ってくると視界も開け、ようやく山頂が見えてくる。花之江河から見上げた山頂の岩は、かなりの巨岩だったことに気づく。その上に立っている二人しかいない登山客は、小指の爪ほどの大きさだ。最後の鎖場を登りきり、山頂部の巨大な花崗岩の上に躍り出ると、視界のほとんどに真っ青な空がおおいかぶさってきた。その瞬間、僕はふわりと空に浮いたような錯覚に襲われた。

next: 眼前には、宮之浦岳を主峰とする峰々がそびえ…

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