世界遺産登録エリアを、唯一クルマで走ることのできる場所がある。島の西側、上屋久町の永田集落と屋久町の栗生集落を結ぶ「西部林道」だ。東シナ海に面したこの辺り一帯には、原生の照葉樹林が広がり、海岸付近から標高1000メートルを超える高さまで、見事な植物の垂直分布が見られる。海から山へとダイレクトにつながる、ダイナミックな景観を誇る場所だ。
はじめて屋久島を訪れたとき、僕はここの風景に圧倒された。海と山が密接につながる島の風景を目の当たりにして、その比類ない自然の奥深さを直観した。それ以来、僕は屋久島を訪れるたびに、西部林道へ足を運んだ。もちろん移住して来たときも、引越しの片付けもそこそこに、新緑の薫るこの森を訪れたのは言うまでもない。

ある日、我が家とはちょうど島の反対側に位置する永田集落に、仕事で出向く用事があった。クルマで反時計回りに走れば、我が家から永田まではほぼ1時間の距離。それに対して時計回りだと、距離的にはほとんど変わらないものの、たっぷり1時間半はかかる。道の細い曲がりくねった西部林道を通るからだ。それでも仕事を終えると、久しぶりに西部林道をドライブしようと、あえて時間のかかるルートを通って帰ることにした。
永田から西部林道にかけては、スカッとした青空が広がり、海はエメラルドグリーンからコバルトブルーへと、爽快なグラデーションを成していた。島の東側では、いつまでも梅雨の抜け切らない、はっきりしない天気が続いていたのだが、西側は打って変わって、ギラギラとした夏らしい太陽が照りつけていた。ここ屋久島では、場所によってまったく天気が違ったりする。屋久島の地形が成す特徴だ。




