「カメノテって、あの“亀”の手?」
居酒屋などのメニューを見て、観光客の二人に一人は、半信半疑に質問する。屋久島はウミガメの上陸数が日本一といわれるだけに、そう考えてしまうのも無理はない。その名の通り、見た目も“亀”の手にそっくりだから、最後まで亀だと思って食べる人も少なくない。かくいう僕も、屋久島へ来てはじめてそれを目にしたときは、民宿の主人に同じ質問を投げかけたことを覚えている。
屋久島では「いそもん獲り」といって、干潮になると貝などの「いそもん」を獲りに、磯場の海へ繰り出す人が多い。なかでもカメノテは、人気の高いターゲットのひとつ。岩の割れ目などにはりついて生息し、一見すると貝のようだが、エビやカニ、フジツボなどと同じ甲殻類に属する。屋久島ではごく普通に食され、居酒屋などでも定番のメニューだ。塩茹でや、バターで蒸し焼きにするなどしていただくと、ビールはもちろん、島の焼酎との相性が抜群にいい。
以前、近所の磯場に散歩へ行ったとき、カメノテがちらほらと岩にはりついているのを目にしていた。梅雨の合間のある晴れた日、その日の晩のつまみを手に入れようと、その場所へ行ってみた。実際にいそもん獲りに行くのは、これが初めて。といっても専用の道具など持っているはずもなく、本格的なわけではない。なかには袋一杯にどっさりと獲るツワモノもいるようだが、僕には焼酎のつまみ程度の量があれば、それでよかった。
海は干潮のピークを過ぎていたが、まだ大丈夫そうだ。僕はまったくの素人なので、どの辺に多く生息しているのか検討もつかない。とりあえずザブザブと海に入りながら、適当な磯場をぐるりと回りこんでみる。すると、所々にこぢんまりと密集しているポイントを発見。

カメノテも考えているのか、岩の狭い隙間に密着するように固まっていて、奥まで手を突っ込むことができない。手の届く場所でも、岩にガッチリはりついているので容易ではない。まだ小さなカメノテはそのままに、大きなものだけをつまんで無理にもぎ取ろうとゴリゴリやっていると、岩で手を切ってしまったらしく、手の甲から流血していた。




