「ゴールデンウィークはどうしようか…?」
「鹿児島に行きたいな。引っ越して来てから、まだ一度も島から出ていないし、久しぶりにショッピングもしたいっ!」
確かに妻のいうとおり、僕は仕事で何度か島から出たことはあったが、妻と子供たちは一歩も島から出ていない。しかし、この時期は屋久島も観光シーズンのピークを迎える。飛行機も高速船も観光客の出入りでいっぱいになり、僕たち島民は島から出られなくなるほどだ。
「仕方がない。鹿児島は今度にして、久しぶりにキャンプにでも行くか」
この島に来てから、まだ一度もキャンプをしていなかった。東京にいた頃は、まるで薬がきれては緑を欲するかのように、一年に何度もキャンプへ出掛けたものだが、島での暮らしはそもそも自然に囲まれているせいか、不思議とキャンプに行こうという気にもならなかった。都会に暮らしていると自然を求め、田舎に暮らしていると、逆に都会に出たくなる。自然の中に文明を築き上げてきた人間にとって、健全な精神状態を保つには、自然と都会の両方に接する必要があるのかもしれない。
1年以上も眠らせていたキャンプ道具を引っ張り出し、島の西側、栗生(くりお)集落にある「青少年旅行村」へと向かった。そこは海も山も望める、最高のロケーションにある。テントサイトも気持ちよさそうな芝生で、いつかキャンプをしたいと思っていた場所だ。
クルマで走ること約40分。もちろん渋滞することもない。かつては何時間もクルマを走らせ、渋滞にはまり、キャンプ場に到着する頃にはいつも疲れ切っていた。それに比べれば、あっけないほどの近さだ。到着すると、黄金週間真っ只中にも関わらず、テントはまばら。僕たちは隅っこの、最も静かな場所に張ることにした。





