「コレ、今日ウチの畑でとれたのよ。食べ切れないから…」。
いつも近所のおばさんが、野菜を届けてくれる。とれたての新鮮な野菜は実に美味い。しかも、「農薬は面倒だから使わない」というおばさんが作る野菜は格別だ。
以前から僕たちは畑に興味があり、我が子らにも「畑体験」をさせたいと思っていた。特に野菜をあまり好んで食べない娘の菜月には、収穫の喜びと、それを食べる喜びを教えてやりたいと思っていた。野菜をいただくばかりでは申し訳なく思っていたこともあり、「今度、畑仕事を手伝いたいから、連れて行って!」と、おばさんに頼んでおいた。
「あとでウチの畑に遊びに来ない?」。ある日、おばさんから誘いが掛かった。待っていましたとばかりに、おばさんの運転するスクーターの先導で、畑へと案内してもらう。細い農道を下り、砂利道へ入ると、その両側におばさんの畑は広がっていた。前岳の山々が背後にそびえる、広大な畑だ。どうりでいつも、いろいろな種類の野菜や果物を持って来てくれるわけだ。畑だけでなく、タンカンやビワ、時計草(パッションフルーツ)などの果樹園まである。趣味でやっているとは言うものの、そのスケールの大きさにびっくりだ。
クルマから降りるや否や、我が子らは真っ先に果樹園へ駆け込み、手頃な木を見つけて木登りをはじめた。ちょっとした自然を遊び相手にするのが、ずいぶんと上手くなったものだ。「家の庭にこんな木が一本でもあればなぁ…」。そんなことをふと思いながら、果樹園をすり抜け、その奥にある畑へ。
「ほれ、そこに大根が埋まっているから、掘っていいよ」というおばさんの一声を合図に、息子の柾陽は「これも掘っていい? あれもいい?」と、とにかく掘りまくる。ただ“掘る”という行為に快感を覚えたらしい。自分の顔よりも大きな桜島大根などを、次々に引っこ抜く。「大物ねらい」の柾陽に対して、菜月は“島にんじん”などの小物を、ポコポコと熱心に掘り起こす。いいコンビネーションだ。そういえばふたりとも、砂遊びや泥遊びが大好きだった。その経験を如何なく発揮していた。





