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南の島の雪だるま

2006年1月23日

屋久島でも風邪がはやり出した。暖かかった日が続いたかと思うと、今度は寒い日が続く。そんな気まぐれな島の天候のせいで、子供も大人も体調を崩している人が多いようだ。それでも寒いとはいえ、12月の寒波に比べればそれほどでもない。ストーブに火をつけるかどうか悩む程度で、我が家の家計と地球のことを考えれば、「ウォームビズ」対応で十分に耐えられる寒さだ。

この天候に、どうやら虫たちも戸惑っている様子。夜になると再び鳴いていた秋の虫もすっかり息をひそめ、ブンブンと飛び交っていたハエも一体どこへやら…。おそらく周りの家庭よりは少々寒いと思われる我が家では、いつもはササッと素早い動きで壁や天井を這っているクモが、捕まえることが出来るほどに動きを鈍らせていた。

寒くなると、どうにも山が気になる。雪は積もっているだろうか…。先月、標高1000mを超えたあたりの、とある山中に、雪遊びをするにはちょうどよさそうなスペースを見つけておいた。年末になって、僕の実家から送ってもらったスノーシューズとスキー用のグローブを持って、子供と雪遊びに行ってみた。雪の具合がよく分からず、積もっている保証はない。「条件付」の出発となったが、子供たちは大はしゃぎだった。山道をクルマでだいぶ上がって来ると、残雪がちらほらと現れはじめる。この分なら大丈夫そうだ。目的地に到着すると、遊ぶには十分な量の雪が積もっていた。

早速クルマから降り、ズボズボと雪に入っていく。さすがにここは南の島。フカフカの粉雪というわけにはいかず、このあたりの標高ではザラメ雪だ。ぎゅっと握っても、すぐにボロボロと崩れてしまう。雪合戦の雪玉をつくるにも、雪だるまをつくるにも、難易度の高い雪質だ。

まずは雪合戦。思い切って投げると、雪玉は空中で崩れ、四方に飛び散る。なるべく手首を返さずに投げるのがコツだ。子供にはやはり難しく、いつの間にか、僕と妻のふたりだけの真剣勝負となっていた。

そして雪だるま。この雪質では、雪玉を転がして大きな雪だるまをつくることは出来そうにない。両手に収まる限りの雪玉で、可愛らしい小ぶりのだるまをつくると、杉の枯枝を拾って来てデコレーションを施す。枯葉と実で顔を描き、腕を加え、さらに前身頃に実のボタンをあしらう。最後に息子の帽子をかぶせてあげると、どことなく生き生きとしているではないか! 屋久杉の枝葉ではなかったものの、南の島の雪だるま・屋久島バージョンの完成だ。

1時間も遊ぶと、子供たちは喉が渇いたといい、雪をほおばる。水の美味い屋久島は、当然雪も美味い。まさに、天然のかき氷だ。そうか、シロップを持ってくればよかった。自分のことしか考えていなかった…。僕は雪を袋に詰めると、クルマに積んできたクーラーボックスに入れた。これを持ち帰って、焼酎で割ろうと企んでいたのだ。季節限定の雪割り焼酎だ。

家に帰ると、早速丸めた雪をグラスに入れ、焼酎を注ぐ。ザラメ雪をぎゅっと丸めた雪玉は思いのほか融けにくく、焼酎をちびちびやるにはちょうどいいあんばいだ。この季節、お湯割りもいいが、雪割りも風情があってなかなかだ。もちろん子供たちも、今度はシロップのかかった天然のかき氷を、美味そうにほおばっていた。春が来るのも待ち遠しいが、もう少しの間、南の島の冬を楽しむとしよう。

菊池 淑廣(きくち・よしひろ)

1969年、東京生まれ。1993年にスポーツウェアメーカーに入社。一貫して広告宣伝の仕事に携わり、自ら撮影、コピーライト、デザイン制作までマルチにこなす。

2005年4月、家族共々屋久島へ移住。それと同時に広告事務所「屋久島メッセンジャー」を設立し、雑誌やウェブサイトなどを通じて屋久島の情報を発信しながら、広告プランニング、撮影、コピーライト、ロケ・コーディネートなど、幅広く活動している。著書に「屋久島で暮らす あるサラリーマンの移住奮闘記」(山と溪谷社)。

ブログ「フォトライター菊池の屋久島移住ライブ日記」も公開中。

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