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モッチョムのてっぺんに座る

2005年12月19日

あのてっぺんから、島を見てみたい…。

そう思うのは自然なことだった。憧れのモッチョム岳を見上げるうちに、あの山頂から見下ろす風景はどんなだろうと、いつしか思いを馳せるようになっていた。モッチョム岳登山は屋久島の中でも、かなりきついコース。海岸近くに1000m近くも、一気にそそり立つその姿を見れば、想像するのは難しくない。

思い立ったのは去年の秋。屋久島への移住に向け、住み処を探しに島を訪れていたときだ。島に滞在して2週間が過ぎた頃、物件探しも小康状態に入り、気分転換という正当な理由をつけて、ここぞとばかりにモッチョムのてっぺんを目指した。

登山口から登りはじめて間もなく、一体どこまで続くのかと思わせるほどに、屋久島ならではの急斜面が続く。登りっぱなしの崖のような山道にたまらず立ち止まり、息を整えていると、頭上からガサガサと音が聞こえてくる。ここはほとんど観光客の来ないルート。ヤクザルか…? 相手を刺激しないようにゆっくり見上げると、年配の夫婦らしき二人連れが、えっちらおっちらと下りてくる。昨今の中高年登山ブームで、ここ屋久島の山でも年配の登山客にはよく出会う。それにしても、こんなマニアックなルートで出会うとは…。ヤクザルに出会う確率よりも低いはずなのに…。

「この後、飛行機で帰るのよ。急がないと乗り遅れちゃう…」。ふくよかなおばちゃんが、息を弾ませながらそう言い残すと、しっかりした足取りで、えっちらおっちらと下っていった。いやはや、最近の中高年は元気だ。帰る日にこのモッチョム岳に登るとは…。「かくいう自分も、もしや中年の域…?」。頭をよぎるそんな思いをブルブルと振り払い、重い足取りで再び登りはじめた。

開けた尾根に出ると、突然巨木が姿を現した。樹齢3000年といわれる「万代杉(ばんだいすぎ)」だ。この島で目にする他の屋久杉とは違った印象で、どことなく寒そうにも見える。年老いた屋久杉たちは、たいてい多くの着生植物()を纏っている。自らの老いた体を、ひっそりと覆い隠すように。それに対して万代杉は、自らを誇示するかのように、己の身体を堂々とさらけ出していた。「孤高の屋久杉」…。僕には彼がそう見えた。

着生植物(ちゃくせいしょくぶつ):土壌に根を下ろさず、他の木の上、あるいは岩盤などに根を張って生活する植物。

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