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ヒッチハイク(?)をする猿

2005年8月22日

屋久島にはクマなどの大型哺乳類が生息していないため、安心して山歩きができる。比較的大きな動物といえば、せいぜい「ヤクシカ」と「ヤクザル」くらいだ。ともに屋久島にしか生息しておらず、ヤクシカはニホンジカ、ヤクザルはニホンザルの亜種で、カラダはいずれも小さめだ。屋久島の森を歩いていると、必ずといっていいほどの確率で遭遇する。クルマで走っていても、道路を横断する姿などをよく見かけ、轢いてしまいそうになることもしばしばある。

この島のそんな日常の中、“事件”は数年前から起こり始めたという。なんと、ヒッチハイクをするサルが出没するというのだ。僕も以前、クルマに乗せてあげたことがある。もっともその時は、自分がヒッチハイクをされたという認識はなかったが…。

「ヤクスギランド」という巨木が立ち並ぶ森へと向かう道中、いつものようにサルの群れをよけながらクルマを走らせていると、群れとは別のサルが一頭、駆け寄ってきた。心無い一部の観光客がたまにエサをあげてしまうらしく、人馴れしてエサをねだるサルが最近増えていると聞いていた。

「お前にやる物など何もないっ!」と、心を鬼にして急いで窓を閉める。と同時に、ボンネットの上にサッと飛び乗って来るや、一瞬クルマの中の様子を伺ったかと思うと、素知らぬ顔をして座り込んでしまった。エサをあげる素振りなど一切見せないのに、サルはその場を去るわけでもなく、こちらに関心すら示さない。窓を閉め切った車内から威嚇すると、相手も「キーッ」と毛を逆立て、歯を剥くだけで逃げようともしない。

ちょっとした「ジュラシック・パーク」気分だったが、歯茎を露わにしたサルの表情に、子供たちは慄き、泣き叫ぶ。仕方なくゆっくりと走り出し、ハンドルを右に左に切って振り落とそうと試みるが、意地でも落とされまいと、ドアミラーにしがみついて離れない。まるで刑事ドラマのワンシーンのようだ。

これには僕も根負けし、とうとうサルを無視して先を行くことにした。それにしても、フロントガラスの前にサルが座っていては、前がまともに見えやしない。スピードを控えめに、対向車に指を差されながら、数キロは走っただろうか。何やらサルがソワソワし始めた。

「ん? どうしたんだ…?」

ジョ〜〜〜…。

「オシッコかよっ!」。もう笑うしかなかった。さらに数キロ走った辺りで、またもやソワソワしている。「今度はウンコかっ!?」

違うようだった…。周囲をキョロキョロと見回し、どうやら降りたそうにモゾモゾしている。もしかして目的地周辺か? スピードを落としてやると、ヒョイッと飛び降り、礼も言わずにサッサと森の中へと消えていった。

下山して地元の友人にその話をすると、どうやら最近頭のいいサルがいて、一体どうやってそんな横着な移動手段を覚えたのか、ヒッチハイクをするらしい。というよりはむしろ、カージャックに近いのだが…。世界遺産の島に棲むサルは、果たして特異稀な頭脳を持ち得ているのか…?

それはともかく、みなさんも野生のサルには決してエサをやらないように。それと、クルマにも乗せないように…。危ないですからね。

菊池 淑廣(きくち・よしひろ)

1969年、東京生まれ。1993年にスポーツウェアメーカーに入社。一貫して広告宣伝の仕事に携わり、自ら撮影、コピーライト、デザイン制作までマルチにこなす。

2005年4月、家族共々屋久島へ移住。それと同時に広告事務所「屋久島メッセンジャー」を設立し、雑誌やウェブサイトなどを通じて屋久島の情報を発信しながら、広告プランニング、撮影、コピーライト、ロケ・コーディネートなど、幅広く活動している。著書に「屋久島で暮らす あるサラリーマンの移住奮闘記」(山と溪谷社)。

ブログ「フォトライター菊池の屋久島移住ライブ日記」も公開中。

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