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南の島の涼

2005年8月8日

南の島の夏は、陽射しが強くムシ暑い。とはいえ、ヒートアイランドと化す都会のそれとは、暑さの質が明らかに違う。日陰さえあれば気持ちよく昼寝ができるほどに涼しい。さらにここ屋久島には、涼を得られる気持ちのいい場所がたくさんある。我が家にはエアコンが子供部屋にしかなく、地球温暖化防止に少しでも貢献しようと、それもほとんどスイッチを入れない。だから決まって週末になると、誘われるように、自然の涼を求めて今日はどこへ行こうかと、家を出る。

島だけに海の涼はいうまでもないが、屋久島では澄んだ川の水が冷たく格別だ。また、標高の高い山へと入れば、ひんやりとした空気に包まれることもできる。そして、滝。見るだけで涼やかな気分にしてくれる上、きめ細かい水分を含んだ空気は肌に心地よい。と、選択肢はいくらでもある。

この季節、涼を求めて出かけるならば、島の西部にある「大川の滝(おおこのたき)」は絶対に外せない。日本の滝100選にも選ばれた屋久島最大の滝で、周りを山に囲まれているため木陰も多く、それだけでも涼しいスポットだ。何を隠そう、以前に書いた「山ん中の不思議なビーチ」のすぐ上流にある滝がここだ。

ジリジリとした陽射しが肌を突き刺すほどに暑い中を、仕事で1日中駆け回っていた8月初めのある日。ちょうど「大川の滝」を通りかかる幸運に恵まれた。これは涼みに行かない手はない。すぐ傍にある「大川湧水」という、もちろんタダで飲み放題のミネラルウォーターを、とうに空になった水筒にたっぷりと補給し、滝へと向かう。観光客も多くいたが、滝壺近くの岩陰まで行けば、「雑音」は滝の音で掻き消され、もはや滝が水面を叩く音しか僕の耳には入らない。

マイナスイオンをたっぷり含んだ冷たい飛沫が、火照ったカラダを包み込む。山の上から落ちてきたばかりの水に足を浸すと、暑さも疲れも吹き飛ぶ爽快感が、カラダのど真ん中を貫く。自然がもたらす冷涼さはじんわりとやさしく、文明の利器によるそれとは全く違った快感がある。この感覚がたまらなく僕は好きだ。さらにカラダを丸ごと冷やしたければ、「山ん中の不思議なビーチ」で、海でも川でも、好きな方に飛び込むことだってできるのだ。

こんな風に仕事をサボることのできる贅沢…。決して都会のサラリーマンには味わうことの出来ない贅沢…。せめて写真から、少しでも涼しげな気分を感じてもらえれば嬉しい。

そして、仕事と“極上のサボり”を終えた帰り道、我が家へ着くまでに三つの温泉を通過しなければならなかった。言うまでもなく、やっぱり誘惑に負けてしまい、「湯泊温泉」へとハンドルを切る。さながら映画のオープニングのような岩礁に砕ける白い波を眺めながら、少し潮の味がするぬるめの湯に身を沈め、この日、さらなる至福を味わったのだった。

菊池 淑廣(きくち・よしひろ)

1969年、東京生まれ。1993年にスポーツウェアメーカーに入社。一貫して広告宣伝の仕事に携わり、自ら撮影、コピーライト、デザイン制作までマルチにこなす。

2005年4月、家族共々屋久島へ移住。それと同時に広告事務所「屋久島メッセンジャー」を設立し、雑誌やウェブサイトなどを通じて屋久島の情報を発信しながら、広告プランニング、撮影、コピーライト、ロケ・コーディネートなど、幅広く活動している。著書に「屋久島で暮らす あるサラリーマンの移住奮闘記」(山と溪谷社)。

ブログ「フォトライター菊池の屋久島移住ライブ日記」も公開中。

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