11月19日、いよいよ大会当日を迎えてしまった。前日は大雨洪水警報が出るほどの雨が降り続き、開催そのものが危ぶまれたが、翌朝には運が良かったか悪かったか、スタートに合わせるように雨は上がった。
今年で35回目を迎えるこの大会、第1回大会はそれまで道路がつながっていなかった島の西部に初めて林道が開通したことを記念して開催されたそうだ。当時はまだ砂利道で、選手は足袋で走ったという。そんな歴史と伝統を誇る大会も、実は今回が最後になるかもしれないという。というのも、来年は屋久島のふたつの町、屋久町と上屋久町が合併する予定。つまり合併後はどうなるか分からないというのだ。いずれにしても、「屋久町」の駅伝大会としてはこれが最後の大会となる。

午前9時30分、号砲とともに、全15チームの中学生選手たちが一斉にスタートした。その直後、僕たちも自分たちの走る区間へと、バスで搬送される。僕の走る20区の出走予定時刻は12時35分。現地に到着してから2時間以上も待つことになる。駅伝大会の模様は、町の防災無線を通じて町内全域・全世帯に逐一実況が伝えられるのだが、僕の走る区間はちょうど集落と集落の間で民家のないところ。町内放送が入らないので、レースの状況が全く分からないまま、ひたすら待ち続ける。
「モォォォー……」
中継所に隣接する牧場から牛の低い声が響き、おまけに“香ばしい”においが漂う中、この日は穏やかな海をぼんやりと眺めながら、入念すぎるほどにストレッチをして体をほぐす。そんなのどかな雰囲気が、レース前の緊張感を全く抱かせなかった。
レースも後半に入ると、ようやく情報が入ってくるようになる。我が明星Aチームは、前半はダントツのトップ。2位に2分以上、昨年はわずか6秒差で1位の座を譲った宿敵、尾之間(おのあいだ)チームには約3分半の差をつけていた。そして中盤ではトップと30秒差の2位。中盤5位と出遅れた尾之間チームには2分半以上の差をつけた。この時点で尾之間チームを合計6分以上と大きく引き離し、すでに優勝を意識する位置にいた。後半に入ってからの状況は全く分からないものの、僕にとってはチームの順位よりも、イヤな位置で襷(たすき)が回って来ないかどうか、それだけが気がかりだった。




