(文=長谷川 ゆか)
世界的なクレジット・クランチ(信用危機)を背景に、大手老舗の経営破綻や工場の閉鎖など、暗いニュースばかりがメディアを覆いつくしている昨今のロンドン。一向に光が見えない銀行や経済界のブラックホールに吸い込まれるかのごとく、いわずと知れたテレンス・コンラン卿の率いる建築・デザイン会社「コンラン&パートナーズ」や、国際的な建築プロジェクトを抱える総合エンジニアリング会社「アラップ」も、年明け早々から大規模なリストラ計画を発表している。国際同時不況の波がいやおうなく押し寄せている建築業界に追い討ちをかけるように、1月中旬、衝撃的な訃報が飛び込んだ。ロンドンを拠点に、近年数多くの斬新な建築物を輩出してきた、チェコ生まれの建築家ヤン・カプリツキー氏が急性心不全に倒れ、家族に看とられながら他界したのだ。その翌日の1月15日、英国のほとんどのメディアはこぞって、この偉大なる建築家の突然の死を大々的に伝えた。
ヤン・カプリツキー──、日本ではあまり馴染みのない名前かもしれないが、数年前、シャープの液晶テレビ「AQUOSアクオス」のCMで登場した、丘の上に立てられた「草とガラスの家(House in Wales)」を覚えている人は少なくないはずだ。このユニークな家を設計したのが、英国の建築事務所「フューチャー・システムズ」、その主宰者がカプリツキー氏なのだ。






