(文=中村 孝則:コラムニスト)
「ミシュランガイド東京2008」は、予想を超えた反響があったようである。多くのメディアは、そのチョイスに疑問反論もあったようだ。バレバレの覆面調査員の話しや黒幕の噂など、いろいろな憶測も流れた。しかし、ガイドブックは一つの利権ビジネスでもあるわけで、その選びにイチャモンつけることは意味が有ることとは思わない。少なくとも、東京という都市で世界最多の150店も星がついたことは、評価に値すると思う。
が、それでも個人的に大きな不満がある。料理うんぬんの話しではない。駐車場である。今回、星を獲得した150店舗の中で、専用の駐車場を有している店は、私の知る限りでは24店舗しかない。しかも、そのほとんどがホテル内の店舗である。
ミシュランガイドのお店を訪ねるというのは、誰にとっても特別な瞬間であろう。誘われれば胸が高まるに違いない。エスコートをする側だって気を遣うはずだ。それなのに、肝心の駐車場が用意されていないというのはいかがなものか。着飾って、コインパーキングから歩けというのだろうか。雨が降ったならどうするのだろう。二人合わせて数万円の料理を味わう日に、タクシーというのも味気ないという声もある。レストランの愉しみとは、単に皿の上だけでは無いはずだ。行き帰りの行程だって含まれるだろう。お酒があるからというけれど、酒を飲まない客も多いだろうし、帰りは運転代行という選択肢もある。
東京は地価が高いから、駐車場のコストはその分料理にというエクスキューズも聞こえてきそうだが、都内には一食1000円でランチが食べられる駐車場つきのロードサイドレストランが沢山あるではないか。そもそもミシュランガイドは、1900年にドライバー向けの実用ガイドとして創刊したはずである。東京版でも三ツ星の基準が「そのために旅行する価値がある卓越した料理」とある。そのガイドが、道程を無視して皿だけの世界に終止しているのは、個人的にはちょっと寂しいと思うのである。




