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普通の人にはジャガーに見えても、このデイムラーの「フルーテッド・グリル」はオーナーの密かな誇りになる。

シルクのような走りと高貴なインテリアは別世界を思わせた

表題の「DD6」はそうした歴史を受け継ぎつつ1979年に誕生したもの。少量手作りの生産だけをしてきたデイムラー社は、1960年にジャガーに吸収され、以来ジャガーのボディシェルを利用したモデル作りをしていた。この「DD6」もジャガー・シリーズⅢのボディ、シャシーを使い、シンボリックな「フルーテッド・グリル(波形模様の)」と「D」のエンブレムとでデイムラーであることを主張した。エンジンは60度V12気筒SOHC5343ccで、もともとはジャガーEタイプのために開発された。しかし、燃料噴射装置などを導入し295PSにチューニングされた「DD6」用は絶妙で、「シルクのような……」と形容されるテイストは、まさに「DD6」の走りに相応しい。

3段オートマティックのギアボックスをはじめ、ブレーキを含む足周りなども旧式であったが、シルキーな走りには不満はなかった。

磨き上げられたウッドと本革で構成されるインテリアは、「DD6」のもうひとつのセリング・ポイント。その雰囲気に包まれて走り出せば、なるほど別世界を思わせた。

ジャガー・シリーズは1986年にXJ40系にモデルチェンジするのだが、その後も「DD6」だけは旧タイプのボディシェルのまま5年間以上も生産、販売がつづけられた。そういう伝統を持つ、憧れのモデルはやはり「残しておきたいもの」という感覚が働いたのではないだろうか。

 

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いのうえ・こーいち

理工系大学院修了。日本写真家協会(JPS),日本写真作家協会(JPA)会員。
主な連載誌は,小学館「ラピタ」,日本カメラ社「日本カメラ」,エイ出版「東京生活」,サドルシューズ「ミニフリーク」など。クルマをはじめとして,乗り物全般を愛好する。著書には「客車好き」(JTBパブリッシング),「ぼくの好きな時代,ぼくの好きな車たち」(エイ出版),「クルマ好きはやっぱりフェラーリが好き」(二玄社),「アルファ156」(経林書房),「世界の自動車100点」(講談社),「世界の名車」30巻(保育社),「男の鉄道ホビイ」(エイ出版社)などがある。

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