DDターンテーブルの名器「SP-10」を
彷彿とさせる強力モーターで強力駆動
いとも簡単にドラムが反転するため、製品を見ていると、「なんだ、大したことはないじゃないか」と思ってしまうが、実は、そうでもなかったらしい。松下電器では、この「クイック反転」動作の実現のために、わざわざ新たなモーターを開発しているのだ。
「デュアルDDモーター」と名付けられたこのモーター、従来のダイレクトドライブ(DD)モーターと少し構造が違う。通常は、ドーナツ状に配置したステーター(いわゆる電磁石)の内側に、永久磁石を使ったローター(回転子)が入って、モーターとして成立している。ところが「デュアルDDモーター」では、ステーターの外側にも、永久磁石を使ったローターがついている。ローターが二重になった上、直径も大きくなっているから、同じ磁力でもトルクが大きくなる。
インナーとアウターのローターに使われた、磁極マグネットの数も違う。従来は8個だったが、新型ではなんと60個! べらぼうな増やし方だ。

振動の少ないモーターに加え、ドラムの振動を押さえるダンパーや重心の最適化で、騒音や振動を大幅に削減。静かな洗濯機が完成した。
DDモーターで磁極が60個。これで即座に思い出したのが、1970年に発表され、プロ用ターンテーブルの標準機となった「SP-10 MK1」だ。こちらはローターのマグネットではなく、ステーターコイルが60個だったが、芸術的なコイルの巻き方や、子供を乗せても回転するトルクの強さが、今でもマニアの語り種になっている。DDモーターの老舗が本気で作ると、生活家電とオーディオという、全く違う分野でも似たようなモーターが完成するのだと、妙なところで感心してしまった。
おっと、余談が過ぎた。「デュアルDDモーター」の、ターンテーブルを彷彿とさせる構造は伊達ではない。トルクが大きいのはもちろんだが、回転精度は従来型の4倍になった。また、磁極が増えたことで、モーターの角速度の変化も激減。従来の5倍もなめらかに回転するようになった。
洗濯機のフラッグシップモデルでは、従来から32ビットマイコンで高速演算を行い、ドラムを自由自在に動かしていたが、大きなドラムに洗濯物と洗濯液を入れて、小刻みで急速な反転動作をさせるには、ソフトの変更だけでは無理。高精度でなめらかに回転する新型のモーターがあってはじめて、思い通りの位置で正確にドラムの回転を止め、即座に反対側に回転させるという動作が可能になったのである。




