役者は単純な年齢の年輪だけでは評価されにくい生き物
自己満足、などという言葉はあまりに謙虚だろう。当たり前のことだが、本木は自分の求める形を表現できればいい、と考えているのではない。あくまでも、より本物に近づくために、形を追求する、とことん極める。だからこそ映画の中での彼は、本物のチェリストであり、本物の納棺師であった。
10代でデビューし、20代以降は役者としてさまざまな役柄に挑戦し続け、40代になった今、そのスタイルはより確立されてきているのだろうか。
「申し訳ないんですけど、いくつになっても確立されるということはなく、迷い子のままなんですよね。映画の中で山﨑さんが納棺師の仕事を“君の天職だ、この仕事は”というあおり方をし、その言葉に引き寄せられるかのように、主人公は納棺師の世界に入っていくわけですが、私自身は誰かにそう指摘されたとしても、役者という仕事を天職だと実感できたことがないくらいなのです。
役者の世界は、自分がこうしたいという思いだけでは何かを表現することができません。時代とコラボレーションする、あるいは、時代を写し出すのが役者であり、だからこそ、一人の人間であるのにもかかわらず、消耗されてしまう感覚もある。事実、“あの人、飽きたね”と言われることもありますよね?
だからこそ、常に少しずつでも、自分なりの小さな革命、脱皮、新しい挑戦を仕掛けながら、時代とどう関わり、交わっていくかということが、大切なのだと感じています。役者は単純な年齢の年輪だけでは評価されにくい生き物です」





