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演じる上で、肉体という器を仕上げることから始めた

『おくりびと』の主人公は、小さなオーケストラのチェリストだったが、楽団の解散により職を失い、妻とともに生まれ故郷に戻る。そこは山形の田舎町。母親と二人で暮らした家に、妻と二人で住み、求人広告で見つけた“旅のお手伝い”という仕事に就く。

話題性としても映像としてもフィーチャーされるのは納棺師の仕事なわけだが、映画全体に流れるのは、とても静かで穏やかな空気感だ。

小山薫堂が手がけた脚本は、ユーモアもありテンポもよい。と同時に“お互いを思いやる”田舎町独特の、温かみのある言葉にも満ちている。

そのゆったりとした言葉や時間に身をゆだねるうちに、見ている私たちも、主人公の気持ちに寄り添うようになる。そして自分自身の親子や夫婦、あるいは他者との関係を見直す機会をも与えられる。

そうした人と人とのつながりというテーマがある一方で、この映画からは、本木雅弘という人間の、役者業に対するスタンスが垣間見える。

それは、映画で主人公を雇い入れる会社を営むベテラン納棺師を演じた山﨑努を賞する本木自身の言葉からも窺えた。

「この映画には、山﨑努さんの存在は欠かせません。山﨑さんは、人間に対して深い情を持つ人だと思うのです。納棺師という仕事は、ひと口で言えば人の気持ちに寄り添うものです。今回の役柄を演じるに際して、山﨑さんは技術面や所作そのものよりも、その心の部分を押さえたのだと思います。

私は、どちらかというと自己満足追求型。ですから、演じるときには形から入る傾向があります。今回に関しても、とにかく肉体に言い聞かせ、肉体という器を仕上げることから始めました」

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