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クレイジーとしかいいようがない過激な撮影

『ボーン・アルティメイタム』のロケは、ロンドン、(モロッコの)タンジール、ベルリン、ニューヨークなど、世界各地で行われたのだが、その撮影はかなりスリリングだったようだ。

「このシリーズの監督は皆インディーズ系出身。だから、ハリウッド・システムとインディーズの考え方が常にぶつかりあうような現場でした。今回は特に3作目ということもあり、ハリウッドからいろいろと注文がくるのではと懸念されていたので、その影響力が及ばない遠隔地でのロケを選んだのです。ロンドンでもタンジールでもほとんどゲリラ撮影状態。マンハッタンでのカーチェイス撮影なんて、クレイジーとしかいいようがないですよね(笑)」

街の風景をCGで合成するというようなことは一切なく、「ロケについては“作り物”がないというのが特徴であり魅力」と誇らしげだ。1日に38万人が乗り降りするというロンドンのウォータールー駅では、撮影中とはつゆ知らぬ一般客が、サインを求めに来たりもしたそうだ。

作り物ではない迫力がみなぎるこの人気シリーズも、残念ながら今回が最終章。だが、「多分これが最後」と言いながらも、思わず身を乗り出してしまうような言葉が、本人の口から飛び出した。

「何年も先、ポール・グリーングラス監督が『もう一度やらないか』と声をかけてくれたら、やりたいという気持ちがあります。監督も僕も、ボーンという役を埋葬してしまう準備がまだできていないのです。5年先、10年先に情勢が許し、題材があったら、選択肢として(第4弾の製作を)選べるようにしておきたい」

大味なアクション映画がはびこる昨今。こんなに緻密で胸躍る上質な作品がまた見られるのだったら、5年でも10年でも待つ価値は十分だ。10年後、デイモンは47歳。渋みの増した孤高のヒーローに再会できる日が、今から楽しみでならない。

ストーリー 『ボーン・アイデンティティー』『ボーン・スプレマシー』──大ヒットシリーズの第3弾にして最終章となる作品。CIAの極秘プロジェクトによって暗殺のスペシャリストとなったジェイソン・ボーン(マット・デイモン)。記憶を失った彼だったが、過去から逃れることはできず、次々と危機が押し寄せる。そんななか、必死で自らのルーツを探し続けるボーン。過去を取り戻すため、ロンドン、パリ、モロッコと世界各地を転々とする彼が、最後に向かったのはニューヨーク。そこには、驚愕の真実が待ち受けていた!

橋爪 さつき

一般企業でのわずかな会社員生活の後、映画雑誌、料理雑誌編集部員、フリーランスを経て、企画編集会社キッチュを設立。いくつかの映画サイトを企画運営する一方、男性誌「Pen」女性誌「PHPスペシャル」などでも執筆。「韓国映画俳優事典」「冬のソナタ『キム次長』クォン・ヘヒョと学ぶハングルスタートブック」(共にダイヤモンド社)などを編集。

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