ネコが急に虫に飛びついていく
そんな感じで仕事をしているんです(笑)

小泉自身は出来上がって初めて気づいたというが、もうひとつの作品『やじきた道中てれすこ』(平山秀幸監督)もロードムービーである。こちらでは、売れっ子だがちょっととうの立った花魁(おいらん)・お喜乃を演じている。おなじみの弥次さん(中村勘三郎)、喜多さん(柄本明)が品川の遊郭で久しぶりに再会し、お喜乃の足抜けを手伝って江戸から沼津をめざす。落語ネタが散りばめられた3人の珍道中は、笑いと人情たっぷりの正統派喜劇だ。
彼女は自身のサイトで、撮影を終えて「日本ってキレイだなぁ。私は日頃、日本を嘆き過ぎなのかもしれないとちょっと反省したりしました」と書いている。海外もいいけれど、短い休暇には日本をもっと知ろうかな、と思ったそうだ。
独特のセンスと存在感をもつ小泉だが、意外にも共同作業である撮影現場で「監督が集めたパーツのひとつになれることが心地いい」と話す。
「映画って何十人、何百人がそれぞれの役割をまっとうして作り上げていくもの。その1パーツとして私がやるべきことがはっきりわかって、心がシンプルになれるんです。1人でものを書いたりするときは自由だけれど、やっぱり迷いや孤独も感じてしまう」
さて、「小泉今日子、次はなにをやってくれるのか!?」とみんな期待しているはずだが、本人はいたってのんびりしている。
「現状で満足するタイプで、ふだんはすごくナマケモノ。できれば休んでいたい、寝っころがっていたいという感じなんですよね。だから、ネコが急に虫に飛びついていくみたいな感じで仕事をしている。目の前にハエが来たら、『なに? なになに?』ってなるけど、あとは寝てすごしていたい(笑)」
ああ、彼女が人々の心をとらえる秘密はここにあるのか──興味がないふりをしながら、ふとした瞬間、全力で対象に向かっていく。そんな姿を見せられれば、こちらとしてはダマされたような、誰も気づかない素顔に触れたような……。
ストーリー 数多くの芝居や映画の題材とされてきた“弥次さん喜多さん”の珍道中を、十八代目中村勘三郎と柄本明のベテランコンビで映画化した作品。弥次さん(中村勘三郎)と喜多さん(柄本明)は、病気の父親に一目会いたいという品川の人気花魁、お喜乃(小泉今日子)にだまされ、足抜けの手助けをすることに。その後、西に向かって旅をする3人だったが、旅籠(はたご)で金を取られるなど、相変わらずの珍道中。そんななか、大阪では謎の生物“てれすこ”が出現し、大騒動となっていた……。
※文中敬称略





