コロンバイン高校で起こった銃乱射事件をモチーフに、アメリカの銃社会をメッタ切りにした『ボウリング・フォー・コロンバイン』で、アカデミー長編ドキュメンタリー賞を受賞。つづく、9.11をモチーフにブッシュ政権を強烈批判した『華氏911』では、カンヌ映画祭の最高賞であるパルムドール大賞を受賞したマイケル・ムーア監督。その最新作が登場した。
今回のモチーフは、ズバリ“アメリカの医療保険”。先進諸国で唯一国民健康保険制度がないアメリカは、6人に1人が無保険で、毎年、1.8万人が治療を受けられずに死んでいくという。WHO(世界保健機構)の調査ランキングでは、健康保険制度の充実度は世界37位。先進諸国では最下位だ。
そんなデータを反映してか、冒頭に登場するのは、全アメリカ人のおよそ6分の1、約4700万人に及ぶ健康保険を持っていない人々だ。仕事中に指を2本切断する事故に見舞われた大工は、医師から「薬指をくっつけるのは1.2万ドル(138万円)、中指は6万ドル(690万円)」と言われ、中指の処置は断念する。
別の男は、針と糸を手に、自分自身の足の傷口を縫い合わせるという離れ業をやってのける。保険がないことは、かくも悲しき出来事なのか? だが、この映画はそうした6分の1の人々の窮状を訴えるために作られたわけではなく、残り6分の5の保険加入者に対して警告を鳴らす意味で作られたことが、その後、明らかになる。
本作が訴えかけているのは、保険に入っている人たちが病気になったときに、実は保険が下りないことがあるという矛盾なのだ。
ある20代女性は、医師からガンだと宣告されたにも関わらず、保険会社からは「その年でガンになるなんてありえない」とイチャモンを付けられ、ある母親は、加盟している保険会社の系列病院でないと保険が効かないと病院に言われ、たらい回しにされた挙げ句、子どもの命までをも失ってしまう。
次々と登場する事例は、どれもこれも理不尽なものばかり。アメリカ人でなくとも、この制度のひどさには憤慨してしまう。





